賀茂大橋から初めて、後二條天皇陵、吉田神社入口、哲学の道の西田幾多郎碑、南禅寺、岡崎、三条大橋、錦市場あたりまで散策。
ミルクティーが好きなので、香りのついた紅茶が残ってしまう。思いついて水出し紅茶にしてみた。カシスとブルーベリー、グレープフルーツ、フランボワーズ、サクランボなど日替わりでなかなか楽しい。中でもレモングラスが爽やかで今の季節に合っていた。
児童文学者の石井桃子が、70歳の頃に書いたという幼い日の回想「幼ものがたり」を読んでいたら、姉の背中におんぶされた作者が、「家へ帰ったら、コリコリを□□ちゃんに分けてやろうね」と言う場面に行き当たって、何とも懐かしい気分に襲われた。
これは絶対にずっと前に読んだことがあると思って探しまくったら、「暮しの手帖」34号の中の「しゃけの頭」という随筆に同じ場面があった。これは、1956年出版なので作者が49歳の頃である。
子どもの頃に、たまたま家の本棚にあったのを引っぱり出して読んだ文章が、ずっと頭の隅に残っていたわけで、久しぶりに昔の友だちに会ったような気がした。
ちなみに「コリコリ」とは新巻鮭の頭のことで、幼い作者の好きな食べ物だった。
英国土産の「Scottish Dishes」の本からいくつか作ってみた。
Smoked Haddock Kedgere、
Cheese & Onion Oat Pie、
Crunchy Rhubarb Oat Crumble、
燻製鱈の代わりに燻製の鰊、ルバーブの代わりに林檎にしたが、珍しい味でなかなか美味しかった。
「seed cake」は、クリスティのバートラム・ホテルにも登場する英国の伝統的なお茶菓子だ。「seed」は「種」なので、昔の訳では「種入りケーキ」となっていたりして、どんなものかとても興味があった。調べて作ってみたらキャラウェイ・シードを使ったバターケーキだった。長年の疑問が一つ解決した。
「caraway」は、和名をヒメウィキョウといい、香辛料や薬用に古くから使われてきたそうだ。
16世紀末から17世紀初めの屏風絵に、日本の絵具を使い、西洋風の技法で、フランス王やトルコ王など西洋の騎馬姿の王候が描かれたものがある。一見、キリスト教には無縁だが、小さく「IHS」というキリストの印が書き込まれている。
このような屏風絵は、イエズス会の宣教師が日本人に技法を教えて制作されたもので、大名に献上された。元々は、キリストなどを描いた礼拝用の聖画を描かせるために、日本人に西洋画の技法を教えたそうだ。
他にも、世界地図や、南蛮船が日本の港に着いたときの様子を描いた屏風絵がある。また十字架やメダル、聖画を収納するための豪華な蒔絵(まきえ)の入れ物などの工芸品もある。
こうした西洋と日本の文化が融合した「南蛮美術」の絵画や工芸品は、キリシタン弾圧と鎖国のため多くが破壊されてしまった。今、見ることができる作品の多くは、仏壇の奥に隠されたりして現代まで密かに伝えられてきたそうだ。
こっそり船に乗り込んだ少年、Timは、船乗りたちに可愛がられ航海を楽しんでいたが、あるとき大嵐に出会い、船長と二人、沈みゆく船に取り残されてしまう。
船長は「泣くんじゃない。勇気を出せ。われわれは、Davy Jonesに囚われるのだから泣いても無駄だ」と、Timに語りかける。
海の美しさと怖さが描かれ、Tim と船長さんの勇敢さが心に残る。
作者が描く絵が素晴らしい。
Davy Jonesは、良く知られた海の魔物らしいが、日本語版は「うみのもくず」となっている。瀬田貞二氏の名訳だ。
'Little Tim and The Brave Sea Captain' by Edward Ardizzone
紅茶が大き目のカップでたっぷり出てきて、必ずミルクが添えてあるのがいい。Victoria and Albert Museumのカフェは、暖炉のある優雅な部屋でハープの生演奏をやっていた。
Brown's Hotelでは誕生日の客に「Happy Birthday・・・」の演奏とロウソクを立てたケーキが運ばれていた。
fish & chipsは、お好み焼き感覚の気取らない食べ物。大きな白身魚(cod)の衣付フライに、ジャガイモの素揚げがお皿からはみ出そうに載っていた。
お洒落なデパート「Selfridges」の「salted beef」のサンドイッチには、巨大なピクルスが付いていた。
スーパーの牛乳は、取っ手付きの容器に入っている。単位は「pint」で、1pintが600ml弱だった。
赤と黄緑の小ぶりのリンゴが駅の売店でもどこでも売られている。かじるのに手ごろな大きさ。
ロンドンの王室御用達のチーズ専門店では食べごろのチーズの試食特売があった。黴に覆われものすごく熟成していた。
ロンドンのホテルの朝食は、部屋に運ばれてきた。パンと、ヨーグルトと、フルーツ盛り合わせ又はシリアルと、ジュースとミルクティー。
エディンバラのホテルの「伝統的」朝食は、焼きトマト、焼きマッシュルーム、ソーセージ、ベイクド・ビーンズ、目玉焼き、それにハギスと、茶色いものばかりだった。トーストは薄くてしっかりしていた。材料を自分好みに混ぜて作るミューズリーがあった。それにジュースとたっぷりのミルクティー。
国民詩人ロバート・バーンズの詩、「Address To A Haggis」に出てくるハギスは、ヒツジの肉や臓物にオートミールやスパイスを混ぜて蒸したスコットランドの名物料理で、カブとジャガイモのマッシュが添えられている。乾杯するのは伝統的にはスコッチウィスキー。
「Elephant House」で、ショートブレッドとミルクティーの他に、パイにマッシュポテトを添えグレービーをかけた一皿を頼んだ。fish & chipsと同様、付け合せのジャガイモに味をつけないのがイギリス流らしい。
スコットランドの首都、エディンバラ(Edinburgh)は、ロンドンから飛行機で一時間ほどで、少し気温が下がる。
ケルト人の砦が元で、15世紀終わりからScotlandの首都になり、その後、Englandとの抗争を経て1707年に合併した。
石造りの古い古い町並みは独特な雰囲気がある。
小説家、Walter Scott(1771-1832)、R.L.Stevenson(1850-1894)、Arthur Conan Doyle(1859-1930)の出身地でもある。
Doyleの名を冠したパブを見つけた。Scottの像があった。
特に詩人のRobert Burns (1759-1796)は、Scotland語で詩を作り、Rabbieと呼ばれ親しまれている。
岩の上に建てられたEdinburgh城は、起源を7世紀にさかのぼり、15世紀終わりからScotlandの王が住むようになった。女王Mary Stuart(1542-1587)が息子Jamesを出産した部屋が残され、「The 'Honours' of Scotland」が展示されていた。これは、幼いMaryらの戴冠に使われた王冠、王錫、王剣で、Walter Scottらが見つけ出したものである。
軍隊、Royal Scotsの資料館もあった。最初はEnglandと戦い、その後は英国軍として2回の世界大戦に従軍し、今も存在している伝統ある軍である。
城に近いカフェ、「Elephant House」で、J.K.RowlingがHarry Potterの最初の本を書いたそうだ。ゾウの形のショートブレッドが美味しかった。
Edinburghの王室の離宮、「Palace of Holyrood」では、Diamond Jubileeを記念して王室所蔵品の特別展示をやっていた。宝石類やイタリア・ルネッサンス巨匠たちの素描などが並んでいた。
城から続く大通り「Royal Mile」には、伝統衣装tartanのkilt姿の人がバグパイプの演奏をしていた。珍しい児童書の古書店「Old Children's Bookshelf」があった。
地元の新聞のスポーツ欄はサッカーの記事ばかりだった。
ウィンザー(Winsor)は、曲がりくねった(wind)海岸(shore)が原義だそうだ。 ウィンザー城は、11世紀、ノルマンのウィリアム征服王によって建てられ、外側は歴史的建造物だが、現代の女王も週末を過ごしている現役の城である。中には歴代の王が蒐集した絵画や家具が並び、ナポレオンを倒した記念の「Waterlooの部屋」や、ガーター騎士団が創設され、毎年集う部屋もある。
バース(Bath)は、その名の通り英国唯一の温泉で、ケルト人がスリス女神を祭っていたところから古代ローマ人はアクア・スリス(スリスの水)と呼んでいた。当時、スリスはローマのミネルヴァと同一視され信仰されたそうで、女神の頭像が出土していた。町は今も薄黄色のlimestone(石灰岩)で統一されていて美しい。ロンドンからの道中、薄緑の草原にヒツジや牛がのんびりと散らばり、はるか彼方のチョークの丘には白馬が見えた。サトクリフの世界である。
先史時代の巨石の遺跡、ストーンヘンジは、草原の中にあって遠くからも良く見える。ただ石を載せてあるだけでなく刻み目を入れてはめ込んであるそうで、夏至や冬至にも関係していて確かに色々謎である。ただし大雨でじっくり見る気が起きなかった。