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Queens

「A Traveller in Time(時の旅人)」の主人公ペネロピーは、20世紀初頭のロンドンから母方の伯父伯母が住むダービシャーの古い屋敷にやってきて、16世紀後半の過去に入り込んでしまう。
そこで女王様に会ったかと聞かれ、「会ったことはないけれどドレスは豪華だと聞いたわ」と答える。実は、過去の世界はエリザベス女王(一世)の時代、主人公の時代はヴィクトリア女王なのだが、会話が成立しているのが面白い。両方ともイギリスが繁栄した時代だ。

('A Traveller in Time' by Alison Uttley)

「序の舞」

少し早いが年賀状の絵を描くことにした。着物と帯の色合いを先日見て気に入った上村松園の「序の舞」を参考にして描き上げてから、好き勝手に描いた去年の絵と比べたら、何と色合いが似た雰囲気だった。好みの色だったのは良く良く分かったが、残念ながら描き直さなくては・・・。

疎水沿いに

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京都三条大橋から岡崎の国立近代美術館、疎水に沿って南禅寺、哲学の道へと行ってみた。紅葉ならぬ緑葉のおかげで観光客が少なく、秋晴れの下、鳥のさえずりと風が木々の葉を揺するサラサラという音を聞きながらのんびり歩いた。哲学の道が終わって疎水沿いに今出川通りに出て、ずっと行くと出町柳の賀茂大橋に到着。また鴨川に戻ってきた。

転車台

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「転車台」とは、車両の向きを進行方向に向ける装置で、バックできない蒸気機関車の時代に使われた。静岡県西部を走る「天浜線」の中ほど、天竜川に近い天竜二俣(てんりゅうふたまた)駅には、昭和15年に国鉄二俣線(ふたまたせん)として開業当時の転車台が残されている。実際に車両が転車台に乗ってぐるっと向きを変えるのを見ることができた。向きを変えた車両が入る扇形車庫や腕木信号機も残されている。転車台も信号機も昔は手動だったそうだ。転車台の線路と外の線路をぴたっと合わせるのも動かす人の「勘」だったそうだ。職人技である。

天竜浜名湖鉄道

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 静岡県西部を走る通称「天浜線」に乗った。
 始発駅は「新所原(しんじょはら)」。小さな駅に美味しそうな鰻の匂いが漂っていた。そこへディーゼルカーが一両やってきた。白い車体にオレンジと緑の横線は、特産の「三ヶ日(みっかび)ミカン」を連想させる。
 しばらくすると浜名湖が見えてきた。奥浜名湖と言われる湖の北端に沿って走っていくと、色づき始めた蜜柑畑や、鮮やかに色づいた柿が目についた。このあたり特産の「次郎柿」だろう。
 田畑の中をトンネルをくぐりながらゴトゴト走っていき、一時間程すると内陸に入り天竜川を渡って「天竜二俣(てんりゅうふたまた)」に着いた。ここは昔は天竜杉を運び出す大きな駅だったそうで、70年前の木造駅舎がまだ残されている。
 駅から歩いていくと、ここ出身の日本画家、秋野不矩(あきのふく)美術館に着いた。残念ながら休館だったが、周りの緑に馴染むなかなか良い建物だった。
 駅に戻って、また「天浜線」に乗った。途中でお客がいなくなったので貸切状態で、お茶畑も見ながらくつろいでいると終点の「掛川(かけがわ)」に到着した。途中下車しなければ二時間の旅だそうだ。ここで東海道新幹線に乗り換えた。慌ただしい日常に戻ってきた。

「グレイラビットと、旅するハリネズミ」

 働き者のグレイラビット(Grey Rabbit)は、ノウサギ(Hare)とリス(Squirrel)と一緒に住んでいる。
トウシンソウの芯を蜜ロウに浸したロウソクを灯りにし、水は泉から汲んで、小枝を燃やして料理をし、ハーブをお茶にし、落穂を挽いてパンを焼く。それは「作者が慣れ親しんだいなかの暮らし方」である。
 たくさんのシリーズがあるが、この本では、冬を前にグレイラビットが、ハリネズミ、モグラ、水ネズミなど小さな生き物たちから少しずつ色々な色の布を集めて「旅するハリネズミ」にパッチワークのコートを作ってあげる。ときには恐ろしいフクロウも一役買う。キノコを焼く匂い、ナイチンゲールの鳴き声も聞こえてくる。


Alison Uttley作「Grey Rabbit and the Wondering Hedgehog」

秋の空

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暑い夏だったので、木々の葉は色づくには程遠い疲れた緑色だが、10月ともなるとさすがに天高く風が爽やかで日暮れが早い「秋」になってきた。
「青」と一言では言い表せない色合いの空を見上げながら、この空にはどこまで行っても果てがないのだと思うと気が遠くなってくる。

ゴブリンの踊り

マウロ・イウラートのヴァイオリンを聴いた。

・母国イタリアのヴィヴァルディ作曲「『四季』より夏」、
・留学したオーストリアのクライスラー作曲「プニャーニ(イタリア人)のスタイルによる前奏曲とアレグロ」、
・イタリアのバッジー二作曲「妖精の踊り」
など聴きやすい曲ばかりで楽しかった。

最後の曲は、パガニーニの弟子のバッジー二が、師匠譲りの技巧を尽くした曲だが、原題は「The Dance Of The Goblins (La Ronde des Lutins)」だそうだ。確かに、優雅な妖精ではなく不細工でいたずら好きなゴブリンが跳びはねている感じの曲だった。

能登と加賀の旅

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 石川県金沢市から七尾線で北東に向かい、能登半島の東側の和倉温泉駅に行った。能登半島の「のと」は、昔住んでいたアイヌ人のことばで「突き出た」という意味からきているそうだ。
 この地方は雨や雪が多いので、「能登瓦」という黒光りする湿気に強い瓦が良く使われている。この日も雨模様だったが、千枚田や見附島(みつけじま)など空も海も瓦に似合うグレーがかった景色の中で、道端の紫色の萩の花が鮮やかだった。
 晴れた翌朝は、金沢市から北陸線で南西に向かい、加賀温泉駅で降り山中温泉に行った。鶴仙渓(かくせんけい)は、「こおろぎ橋」や「あやとりはし」など遊歩道が整備されていて、その散策の後の温泉が気持ちよかった。

視線

 「ウフィツィ美術館自画像コレクション展」を見に行った。ルネッサンスから現代までの様々な画家の自画像が並んでいた。画の中の人物ほとんどが、挑むようにこちらを見ている。
 翌日見た「上村松園展」の女人たちは、きりっとしたたたずまいで気品があるが、うつむいたり見上げたり遠くを眺めたりと、決してこちらと視線が合わない。二つの展覧会の視線の違いが面白かった。