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五人囃子

雛祭りの日に、五人囃子を聴いた。
向かって右から、シテ方の謡(うたい)、囃子方(はやしかた)の笛、小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)、太鼓(たいこ)と並ぶ。

同じ皮を張った楽器でも、小鼓は、紐をゆるくかけ、皮も息で湿らせるのに対し、大鼓は、備長炭の火でカンカンに乾かし、紐もきっちり締め上げて金属的な鋭い音色にする。

能楽師それぞれに流派があり、笛は、森田流、藤田流、一噌流(いっそうりゅう)と、三流派に分かれている。各々、息の入れ方で音色が変わるのだそうだ。その違いを伝えようとしても、言葉でも指使いなどの画像でも表せない。伝統の継承は難しいものだ。

ディスク型オルゴール

ディスク型オルゴールは、食器棚ほどの大きさの木箱の中で、金属の円盤を回して反響させるもので、19世紀にドイツで最初に作られた。蓄音機に負けて広まらなかったが、今も細々と作り続けられている。その音色は、柔らかく優しかった。

黄金の騎士

19世紀末のウィーンの画家、クリムトの「人生は戦いなり:黄金の騎士」を見た。行く手を遮る蛇、つまり邪悪の象徴に臆することなく、黒馬に乗り毅然として進む騎士の姿が描かれている。金箔が貼られているのは、日本の影響だそうだ。西洋の題材が、日本的な黒と金を使い平面的な手法で描かれた不思議な雰囲気の画だった。

ホビット

「ホビット」を最初に読んだのは瀬田貞二訳だった。ガンダルフの「やんぬるかな」、つらぬき丸、忍びの者、ゴクリの「いとしいしと」など忘れられない。
ただし、ビルボとゴクリのなぞなぞ対決や、詩の部分は訳せないので原書の方が面白い。

'The Hobbit' by J.R.R.Tolkien

旅の天気

風景を愛でる旅は、晴れて穏やかな天気であってほしい。まあ、二回目なら悪天候でも別の味わいがあるだろうが…。
天気ばかりは予約ができず神頼みだ。

淡路島

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兵庫県淡路島の灘黒岩(なだ・くろいわ)水仙郷に行った。水仙が青い空と海に面した斜面に群生していて香りも良かった。
「夢舞台」の植物園には様々な種類の蘭が展示されていた。野生の水仙と人工的な蘭との対比が面白かった。
ついでにホテルの椅子も花で、春には一足早い花の旅だった。

シャーロック

名探偵ホームズを「シャーロック」と呼ぶのは、原作では兄のマイクロフトだけだった。「シャーロック」と連呼されると、ホームズがぐっと現代風になる。

厳冬の奈良

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若草山の山焼きを見に行った。山焼きの前には、奈良公園あたりでは歩いている鹿が、なんと山裾を走っていた。
山裾の野上神社で行われた山焼きの神事では、春日大社の祝詞(のりと)の後、東大寺、興福寺その他の読経があった。両方あるのが日本らしいと思った。
山を焼くのは、奈良県の消防関係者が総出で行っていた。火の威力、神々しさと恐ろしさを同時に感じさせられた。

翌日は、奈良市街の北の京都府にある岩泉寺(がんせんじ)と浄瑠璃寺(じょうるりでら)に行った。池が凍りついていた。付近には石仏がたくさんあった。二日とも晴れてはいたが、身の引き締まる寒さだった。

ハビトロット

「むかしむかし、やさしく美しいけれど、怠け者の娘がいました。結婚式も近いというのに楽しく踊ってばかりいたので、嫁入り支度にする糸紡ぎがぜんぜんできていません。娘が森で泣いていると、小さなおばあさんがあらわれました。おばあさんは、糸車を素晴らしい速さでまわしていて、娘の代わりに糸紡ぎをしてくれるというのです。おばあさんが紡いだ糸は見事なできばえで、娘は糸紡ぎの名手として有名になってしまいます。

やがて、結婚の日になりました。そのお祝いの席に、醜いおばあさんがやってきたのです。その唇は垂れてねじれ、親指は広がり、足は扁平で、背中は曲がっています。どうしてそんな姿になってしまったのかと聞かれたおばあさんは、それが、長年の糸紡ぎのせいだと答えます。それを聞いた花婿は、花嫁には一生糸紡ぎはさせないと誓いました。めでたしめでたし」

その話を聞いていた動物たちは、「何の教訓もないけど、すてきな話」と言う。同感。

グリム童話にもある話だが、これはポター作。
Habbitrotとして知られるおばあさんが糸を紡ぐ音は、「trot,trot,habbitrot」と聞こえる。「trot」は馬が駆ける音でもある。目にもとまらぬ速さで回る糸車が思い浮かぶ。


"The Fairy Caravan" by Beatrix Potter

エル・グレコ展

エル・グレコは、その名の通り、16世紀半ばにギリシャで生まれ、ヴェネツィアで絵画を学び、スペインで活躍した。その作品には、感情豊かで劇的で色彩豊かな宗教画が多いが、それはルターの宗教改革に対抗するカトリック側として、見る人に訴えかけるように大げさに描いたという側面もあるそうだ。

「マグダラのマリア」「商人を追い払うキリスト」「無原罪の御宿り」など、宗教画といういわばフィクションの世界が、真に迫った迫力で描き出されている。