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ハビトロット

「むかしむかし、やさしく美しいけれど、怠け者の娘がいました。結婚式も近いというのに楽しく踊ってばかりいたので、嫁入り支度にする糸紡ぎがぜんぜんできていません。娘が森で泣いていると、小さなおばあさんがあらわれました。おばあさんは、糸車を素晴らしい速さでまわしていて、娘の代わりに糸紡ぎをしてくれるというのです。おばあさんが紡いだ糸は見事なできばえで、娘は糸紡ぎの名手として有名になってしまいます。

やがて、結婚の日になりました。そのお祝いの席に、醜いおばあさんがやってきたのです。その唇は垂れてねじれ、親指は広がり、足は扁平で、背中は曲がっています。どうしてそんな姿になってしまったのかと聞かれたおばあさんは、それが、長年の糸紡ぎのせいだと答えます。それを聞いた花婿は、花嫁には一生糸紡ぎはさせないと誓いました。めでたしめでたし」

その話を聞いていた動物たちは、「何の教訓もないけど、すてきな話」と言う。同感。

グリム童話にもある話だが、これはポター作。
Habbitrotとして知られるおばあさんが糸を紡ぐ音は、「trot,trot,habbitrot」と聞こえる。「trot」は馬が駆ける音でもある。目にもとまらぬ速さで回る糸車が思い浮かぶ。


"The Fairy Caravan" by Beatrix Potter