迎春
群馬県富岡市の富岡製糸場に行った。
解説によると、ここは、今から140年ほど前、明治時代に国営工場としてフランスの技術を導入して造られた。その後も日本独自の技術革新を続け、生糸の大量生産に貢献した。
また、東繭倉庫(ひがしまゆそうこ)などは、木で骨組みを作り、柱の間に煉瓦を積み上げて壁を造る「木骨煉瓦造(もっこつれんがぞう)」という工法でつくられていて、煉瓦は瓦職人が焼き、フランス式の積み方で積まれているそうだ。
建物を見ていると、当時の日本人の意気込みが伝わってくる気がした。
歌舞伎座で通し狂言「雷神不動北山櫻」を観た。
鳴神上人(なるかみしょうにん)その他、五役を市川海老蔵が、そして上人を誘惑する雲の絶間姫を坂東玉三郎が演じる。
玉三郎は、すべての動きが滑らかで無駄がなく、舞っているように美しかった。
第一部は、「アンブロジオ聖歌」。これは、中世以来カトリック教会のミサなどで歌われてきたラテン語の歌で、一般に「グレゴリオ聖歌」と言われるもののミラノ版。
さしずめ日本なら聲明(しょうみょう)にあたるものかと思った。
第二部は、モーツァルト、バッハそしてフランスやミラノにゆかりのある宗教曲。お馴染みの「きよしこの夜」もイタリア語なので新鮮な感じがした。
この本の主人公「小さな家」は、女の子だ。
好きなものは、おひさまとお月さまとリンゴの木とデイジーの花。
動かないし変わらないはずの「家」なのに、場面によって表情も変わる。
住んでいた場所がどんどん都会になってしまって悲しんでいたが、
最後は、引っ越しをして緑の丘でにっこり笑う。
表紙の玄関の階段のところに「HER STORY」と書かれていた。
"The Little House" by Virginia Lee Burton,1942
12世紀前半につくられた源氏物語絵巻が、徳川美術館で毎年秋に公開される。今年は、「竹河(たけがわ)」(二)と、「東屋(あずまや)」(二)だった。
前者は、光源氏亡き後、春三月、養女の玉鬘の二人の娘、大君と中君が桜の所有権を争って碁を打っている場面。女房達が「長年のお争いだから」と囃し立て歌を詠み、それを夕霧の息子、蔵人の少将がそっと見ている。
後者は、秋、薫が三条あたりの隠れ家にいる浮舟を訪ねて待っている場面。
絵は豪華で繊細。詞書(ことばがき)の紙も書かれた文字も美しく、華やかな宮廷生活が想像された。
伊勢物語を題材にした半能「井筒」を見た。
井筒とは井戸のこと。
月夜に旅の僧(ワキ)がまどろんでいると、夢がうつつか、在原業平の形見の冠と直衣をまとった女(シテ)が現れ、井筒のそばで舞を舞った後、水鏡に姿を映して姿を消す。
600年も昔、室町時代の夜はさぞ暗く、月の光が冴えわたったことだろう。これはまた、男の演者が、女に扮し、更に男装しているという複雑な構造になっている。
能の「幽玄」とはぼんやりしたものではなく、芯の通った美しさだそうだ。静かで神秘的で奥が深い世界だった。