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緑色二種

ロビンフッドは、12、13世紀の中世イギリスの伝承の人物。シャーウッドの森に仲間を集めて活躍したといわれる。衣服の色は、明るい緑色と訳されるが、元は「Lincoln green」。Lincoln特産の生地だそうだ。敵の中に「Kendal green」の衣服を着た一派がいた。こちらは灰色がかった緑色だそうだ。どちらも緑の森に相応しい。

'The Adventure of Robin Hood' by Roger Lancelyn Green 1956

「ピーター・パン」

永遠の子どもピーター・パンは乳歯のままで、生意気でうぬぼれや。過去はすぐ忘れてしまう。

妖精ティンカー・ベルは、ポットやヤカンを修理するから「鋳かけ屋(tinker)」の名がある。葉脈のドレスを着て少し太め。美しいベルの音で会話。ネバーランドの地下の家にある部屋には、妖精界のブランド家具が揃っている。妖精は赤ちゃんが初めて笑ったときに生まれ、その子が妖精を信じなくなると死んでしまうという。

海賊の親分フックは、ハンサムだが青白く忘れな草色の目をしている。悲運のスチュアート家似の顔立ちと言われたことがあるので、メアリ・スチュアートの曾孫のチャールズ二世風の衣装を着ている。実はパブリックスクールで学んだので、良いふるまい(good form)ができるかどうか常に気にしている、

ネバーランドで、鳥とピーターがことばが通じなくて互いにいらいらする場面は妙に現実的だ。こういう世界では動物とも会話ができそうな気がするのに・・・。

大人の作者の視点で書かれていて、全体に夜の夢というか、一部悪夢のような不思議な雰囲気の本だ。

'Peter Pan' J.M.Barrie 1911

フェルメール

17世紀オランダの画家フェルメールの作品を二ヶ所で見た。

まず「地理学者」。薄暗い部屋に差し込む光の中に、地球儀、コンパス、海図、流行の日本風のガウン、ゴブラン織りの敷物、デルフトのタイルといろいろ描き込まれていて当時の生活が偲ばれる。

次に「手紙を読む青衣の女」「手紙を書く女」「手紙を書く女と召使」。当時貿易で栄えたオランダは、市民階級の識字率が高く出版が盛んで手紙が流行した。アジアの商船に出した手紙の返事を受け取るには二年かかったそうだ。江戸時代の日本に来た船もあったことだろう。

key

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「key」には、「鍵」の他に「カエデの翼果」の意味がある。
アリソン・アトリー作「西風がくれた鍵」では、まさにカエデの翼果が鍵になって、少年がカエデの樹の秘密の扉を開けて中を見ることができる。

小豆島の名所、寒霞渓(かんかけい)に、立派なカエデの木があって、翼果がいっぱい成っていた。緑の葉の間に、先端が赤い二枚羽の翼果が今にも飛び出しそうに付いていた。なるほど、これなら「鍵」になりそう・・・と、瀬戸内海の島々の見晴らしよりも、この「key」に喜んでしまった。

日本のオリーブ

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香川県の小豆島(しょうどしま)は、60年以上前に日本で最初にオリーブの芽が出たところだ。遠洋漁業で獲れた魚を保存するため、油浸けにして缶詰にする方法を海外から学んだ日本人は、教えられたとおり「オリーブ油」でなければいけないと思い込み、日本でオリーブの栽培を試みたのだそうだ。

オリーブの木は、実を手で摘みやすいように背の高さを揃えて剪定するため、遠くから見ると新しい木と古い木の区別がつかないが、古い木は幹が太くてねじれていて風格があった。葉も幹も白っぽく緑がかった地中海原産のオリーブの木々が、瀬戸内海を背景に、しっかり根づいて並んでいるのは、なかなか珍しい光景だった。

ちょうど花が咲く季節で、白くて小さな花が満開になっていた。

「The Ship that Flew」

ピーターが買った小さな船は、実は北欧神話に登場する魔法の船だった。折りたたんでポケットに入るほど小さいのに、この世のどこへでも、そして過去の時代のどこへでも、何人でも連れて行ってくれる。同時に、髪や肌の色や服装もその時代に相応しく変わり、ことばも通じるようになる。ピーター以下、四人兄妹が望んだ行き先は、母が入院している病室の他は、北欧神話の神々の住みかや、ノルマン征服時代のイングランド、古代エジプト、ロビンフッドの時代と、いかにも当時のイギリスの子どもたちが興味を持ちそうなところだ。

「バイユーのタペストリー」は、ノルマンディー公ウィリアムのイングランド征服を刺繍で描いた作品だが、以前はウィリアムの妻マチルダが寄進したとも伝えられていた。物語の中では、そのマチルダを名付け親に持つ少女マチルダが現代(ピーター兄妹の時代)にやって来る。彼女は、自分の時代に父が建てた石造りの教会が古びながらも残っているのを見て、その修繕費用を集めるバザーに、得意の刺繍の小袋を作って出品する。12世紀の古い刺し方で、今作られたばかりの素晴らしい作品に、現代の人たちは驚き、競りの値段が釣り上がっていく。

本筋には関係ないのだが、二人のご婦人が競りをする場面で、一人が「○○ポンド!」と値段を言うと、もう一人は「ギニー!(Guineas!)」とだけ言う。この作品が書かれた1939年に、まだ謝礼などに使われていたギニー金貨(Guineas)は、ポンドの1.05倍の価値だったので、そう言うだけで値段を釣り上げる意味になったわけだ。

また、「black eye」に、「殴って黒あざになる」と文字通り「黒い瞳」をかけたり、「Middle Ages(中世)」と「middle-aged(中年)」を間違えたりするところは訳せない面白さだ。

「The Ship that Flew」by Hilda Lewis(1939)

布引の滝

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雨の後なので水量が豊富だった。雄滝は迫力があり、雌滝は優美だった。

六甲高山植物園

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花盛りのクリンソウや、大きな木のサラサドウダンが華やかだ。青いチョウジソウは横から見ると花がT型の花で、近くの「丁子が辻」という地名はT字路だからその名があるのに初めて気がついた。もう咲き終わりのアヤメは綾目模様だから名づけられたそうだ。ちらほら咲き出した黄色のニッコウキスゲはこれから盛りを迎える。外国生まれの花々は可憐だが学名が難しい。猛毒のトリカブトが普通に茂っていて、葵祭りのアオイもある。高山植物の女王コマクサや、清楚なエーデルワイスも咲き始めている。
鳥のさえずりが響く雨上がりの高山植物園は、緑も花も美しかった。

馬が活躍する祭り

京都の葵祭(あおいまつり)は、六世紀から始まったという雅な王朝貴族の祭りだ。今年も総勢五百人余りの行列が御所から下鴨神社へとしずしずとやってきた後、「走馬の儀(そうめのぎ)」が行われた。これは、平安装束の乗り手が新緑の木立の中を一騎ずつ走り抜ける神事で、ドドッドドッとリズミカルに近づいては遠ざかっていく馬の足音も良い。

馬が活躍する伝統の祭りといえば、福島県の相馬(そうま)の野馬追(のまおい)がある。こちらは、平将門(たいらのまさかど)を祖とする元相馬藩の勇壮な武者の祭りだ。ほら貝の音が響く中、甲冑姿の武者が乗る総勢五百騎余りが荒々しく駆け回る騎馬戦は迫力満点だ。毎年七月末に行われるのに・・・と思うと胸が痛くなる。

アボカド

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ここに引っ越す前に種から芽が出たアボカドが、ひょろひょろながら背が伸びたので何度目かの植え替えをした。ただでさえ倒れそうなのに、隣のスイトピーのつるが巻きつきそうなので、共倒れにならないといいけれど・・・。頑張れ、アボさん!