一部復元された名古屋城本丸御殿を見に行った。木の香が残る新しい建物の広い座敷にずらりと金ぴかの襖絵が並ぶ。金塊ではなく金箔だが、洋の東西を問わず権力者は金が好きだったようだ。
風に乗ってやってきた不思議な乳母メアリー・ポピンズが、最初の晩、子どもたちに飲ませた「寝る前に一さじ」と書かれた壜は、苦い薬ではなく子どもたちそれぞれの大好物の味がした。その中で、ジェインのは「ライムジュース・コーディアル」(Lime-juice cordial)だった。
その、ずっと気になっていたコーディアルなるものを見つけたので買ってみた。要するに果物などの濃縮ジュースらしい。有名なのは、エルダーフラワーやジンジャーで、その起原はローマ帝国時代にさかのぼるという。エルダーフラワーのは、炭酸で割ったら爽やかでちょっと癖になる美味しさだ。
"Mary Poppins " by P.L/Travers
八月十五日に行われる施餓鬼(せがき)という仏教の儀式がある。これは、地獄で飢餓に苦しむ餓鬼に飲食を施すものだそうだ。昔、祖母が「おせがき」と言っていた。
佐々木マキ展を見に行った。初期の「ガロ」の漫画から、「ぼくがとぶ」「やっぱりおおかみ」「いとしのロベルタ」などの絵本や、村上春樹の挿絵まで多数。なんだかおかしくてちょっとこわくて不思議な世界。絵本をつくっていなかったら、もっと不気味で訳の分からない方向に行ってしまっていたのではないかと思う。
アメリカの長い夏休みに、姉妹と両親が東海岸の小島にやってくる。そこで、浜辺で遊んだり泳いだり船に乗ったり、春から夏の季節をたっぷり楽しむ。「すばらしい驚き」に満ちた日々。やがて、季節は進み嵐がやってきて夏が終わると、家族は町に引きあげる。潮の満ち引きの時間を頼りに暮らしていたのを、スクールバスの時間に合わせる暮らしに戻るのだ。
暑い夏の昼下がり、この本の海や空や木の絵を眺めているだけで少し爽やかな気分になる。
'Time of Wonder' by Robert McCloskey
備前、今の岡山県は鎌倉時代から刀剣の産地として知られていた。そこで創られたものの一つ、織田信長所蔵で、本能寺の変の後、明智光秀が安土城から奪ったという刀を見た。武器なのに美術品の美しさがあり、歴史の重みまで加わった名刀だった。
聖母マリアの名前は、当時は良くある名前で、元々は「太った女」という意味だったそうだ。太っているのが美しいことだったので、つまりは「美しい女」。日本語ではさしずめ「美子(よしこ)」さんにあたるという話を聞いた。