児童文学者の石井桃子が、70歳の頃に書いたという幼い日の回想「幼ものがたり」を読んでいたら、姉の背中におんぶされた作者が、「家へ帰ったら、コリコリを□□ちゃんに分けてやろうね」と言う場面に行き当たって、何とも懐かしい気分に襲われた。
これは絶対にずっと前に読んだことがあると思って探しまくったら、「暮しの手帖」34号の中の「しゃけの頭」という随筆に同じ場面があった。これは、1956年出版なので作者が49歳の頃である。
子どもの頃に、たまたま家の本棚にあったのを引っぱり出して読んだ文章が、ずっと頭の隅に残っていたわけで、久しぶりに昔の友だちに会ったような気がした。
ちなみに「コリコリ」とは新巻鮭の頭のことで、幼い作者の好きな食べ物だった。