記事一覧

ウィンナーワルツ

 ウィーンフィルのメンバーを中心とした弦楽四重奏「アンサンブル・ウィーン」のコンサート。第一、第二バイオリン、ビオラ、コントラバスという編成。パンフレットには、「十九世紀初めのウィーンでは、酒場やカフェ主催の舞踏会が大流行で、それぞれお抱えの音楽家が演奏していた。踊りのリズムをはっきり出すためにチェロでなくコントラバスを使っていた。その中でも人気があったライナーの弦楽四重奏にバイオリンで参加していたのが、ヨハン・シュトラウス。やがて、シュトラウスは独自のオーケストラを結成し、アイドル並みの人気を誇った。その息子のシュトラウス二世は、世界で最も有名な音楽家の一人となった。」というようなことが書いてあった。
 優雅で軽やかなワルツやポルカを最前列で聴くことができて夢見心地。燕尾服が、さすがに着慣れていてすてきだった。アンコールの最初は「ハンガリー万歳」で、ハプスブルグのエリザベートを思い出した。最後はエルガーの「愛の夢」。

葵祭

 京都下鴨神社の糺の森(ただすのもり)を葵祭の行列が進んでいく。若い女性扮する十二単姿の「斎王代」の乗る輿を中心に、牛車、花傘、騎馬を含む総勢五百名が、平安装束をまとい、葵と桂の青葉を飾っている。音曲や踊りがなく、ただ、しずしずと歩くだけなので、背景の新緑の中に鳥のさえずりも聞こえてくる。その後は、古式にのっとり馬を走らせる「走馬の儀」。平安朝の人々が、ふつうに歩いたり話したり馬に乗ったりしていて、タイムスリップしたような気にさせられる。
 その後、鴨川の岸で休憩した。出町柳の柳月堂のパンを一口かじったとき、背後からビュッと風圧を感じたと思ったとたん、手に持ったパンが消えた。魔法にかけられたようでぽかんとしていると、目の前の少し先を鳥が大きなパンをくわえてよたよたと(重そうに?)川の上を低空飛行していくのが見えた。トンビだそうだ。人の体をかすりもせず、ねらった獲物だけをさらっていったのはお見事だが・・・

アボカド

アボカドの種に楊枝を刺して水につけておいたら、白い根が出て、ひょろひょろの茎が伸びて、細い葉が出てきた。芽が出たのは嬉しいが、どういうわけか、濃い緑色のつやつやした双葉が開くと思い込んでいたので、なんだか拍子抜けしてしまった。
ふと、ピアスの「まぼろしの小さい犬」を思い出した。少年が、飼いたい犬について、長い間あれこれ想像をふくらませるが、実際に会った犬は、自分の想像とまったく違った不細工な犬で、最初はがっかりする話だ。
気を取り直して、植木鉢に植えかえてベランダに出した。モヤシのようなか弱い姿が少しは力強く育つだろうか。

ランプ

「神戸らんぷミュージアム」に、昔の西洋の居間が再現されていた。部屋のそこここにランプが置いてあって、読書には暗いが、柔らかな光と陰が落ち着いたいい雰囲気をかもし出している。この暗さでは、女の人たちが、さぞ美しく見えたことだろう。

a fly in the ointment

「a fly in the ointment」は、旧約聖書に出てくる古い表現だそうだ。ointmentは、今は「軟膏、膏薬」のことだが、昔は、貴重な「香油」を意味した。せっかくの貴重な香油の中にハエが入っては台無し。つまり「玉に瑕(きず)」という意味。なるほど。

春の芦屋

 神戸市の東、芦屋市の中ほどを流れる芦屋川に沿った山側の高台に、旧山邑(やまむら)家別邸がある。これは、帝国ホテルなどの設計で名高いアメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの設計で、大正末期の1924年に建てられた鉄筋コンクリートの建物で、その後、大規模に修復されたものだ。六甲の山並みを背に、緑の木々に囲まれ、自然の一部のように見える建物は、彫刻された大谷石、マホガニーの採光窓など、細工の一つ一つが凝っている。春の日がさすベランダからは、美しい桜並木が続く芦屋川がずっと見下ろせた。
 和室には、明治末期に、酒造家の山邑家当主が長女の誕生を祝って京都の人形店に特別に作らせた雛人形が飾られていた。「雛人形」「花嫁人形」「花観(はなみ)人形」の三式に分かれているが、その中でも当時最高の頭(かしら)師の作品の数々は、一体でも当時の家一軒と同じくらいの価値だったそうだ。雛人形は、頭(かしら)師ほか、髪付け師、手足師、織り師、小道具師などそれぞれ専門の職人の技による総合芸術で、最後、まとめて着付ける着付け師が「人形師」といわれたそうだ。現在では、その技術の復元も無理だという人形たちは、100年以上経つのに生き生きとうつくしかった。
 ビゴのパンがおみやげ。明日の朝は、クロワッサンと、カフェオレ!

アルハンブラ物語

19世紀のアメリカの作家アーヴィングの「アルハンブラ物語」を読んだ。イベリア半島に東洋の高度な文化を伝え、長い間、繁栄した後、15世紀末に滅び去ったモーロ人(イスラム系スペイン人)の最後の砦、グラナダのアルハンブラ宮殿に作者が滞在した時の旅行記だ。
荒々しいスペインのアンダルシアの平原を馬で旅して、万年雪を頂くシェラネバダを背景にそびえる石造りの無骨な城塞であるアルハンブラにたどり着くと、その奥には、モーロ人の王や姫や貴族、その後のアラゴン・カスティーリャの王や王妃が住んだ豪華な宮殿が、秘密の花園のように隠されていた。本に書かれた数々の古いモーロ人の宮殿や財宝にまつわる伝承は、作者がテンペストを引用しているとおり「夢のような素材で織りなされている」ように思われた。(岩波文庫:平沼孝之訳)

さくら夙川

大阪と神戸の中ほど、西宮市に、新しくJR「さくら夙川」駅ができた。その名の通り、近くの夙川沿いは、阪神間の桜の名所だ。新しい駅には、お花見弁当まで売っていた。(正確には、売り切れ!)今日は、お天気もよく、空の青と、川沿いの満開の桜と、松の緑のコントラストが美しかった。

京都御所

 京都御所は、毎年この時期に一般公開される。ここは、794年に桓武天皇が建てた場所とは少し違い、当時は、土御門東洞院殿(つちみかどひがしのとういんどの)といわれた場所で、今から670年ほど前の鎌倉時代末1331年に、ここに移された。その間、何度も火災にあい、今の建物は、ほとんど江戸末期の1855年に再建されたものだ。それでも、右近の橘、左近の桜が美しい紫宸殿や、清涼殿といった建物を見ていると、平安の昔がしのばれる。
ただ、入るときには手荷物検査をされ、いたるところに「宮内庁」の腕章が目立ち、「御所」が過去の歴史ではなく、現在のものでもあるのが感じられた。
 鴨川沿いに、三条から北山を眺めながら散歩した。特に、高野川の桜はきれいだった。

犬吠埼

千葉県銚子市は、日本列島が弓なりに曲がる角に位置する。江戸時代から親潮と黒潮が出会う漁場であるとともに、醤油作りが盛んだった。JR銚子駅から、銚子電鉄というレトロな電車に乗ると、キャベツ畑や、醤油工場のそばをごとごとと走って、犬吠(いぬぼう)駅に着く。犬吠埼灯台は、三方に太平洋の荒波が打ち寄せ、昔「国のとっぱずれ」と詠まれたところだ。そこから水平線を眺めていると、日本は島国だなあ…と思う。海に近い遊歩道に下りたら、ざんぶりと打ち寄せる白い波しぶきを浴びてしまった。しょっぱかった。