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コルデコット

ランドルフ・コルデコットは、19世紀後半のイギリスの絵本作家。イギリス伝承童謡の話をふくらませて楽しい絵本にした絵本作家の先駆け。その絵は華やかではないが、じっと眺めていると、おもわずにこっとしてしまう。彼にちなんで、毎年アメリカで優れた絵本画家に与えられる「コルデコット賞」が設けられている。

成人の日

強風と吹雪で大荒れの前日とは打って変わって穏やかな晴天の一日だった。
「成人の日」は、試験などなくすべての人が二十歳になれば無条件に祝われるという点で、最近めずらしい儀式かもしれない。二十歳といっても学生が多く、一人立ちしている人はごく少ないだろうが、親にとっては、区切りのいいこの年まで子が成長したことに感慨深いものがあるだろう。着慣れないスーツや華やかな振袖をまとって晴れやかな本人たちは、将来、この日をどんな風に思い出すのだろう。

年の暮れ

今年もあと三日。毎年の事ながら、クリスマスのきれいなイルミネーションで飾られた街が、25日が過ぎると、さっとお正月を待つ「年の暮れ」ムードに早変わりするのがおもしろい。八百万(やおよろず)の神の国、日本の面目躍如といったところ。

お絵かき

パソコンのArt Dabblerで恒例の年賀状の絵をかく。一応、板にペンでかくわけだが、「裸の王様」のイカサマ師が織物を織るふりをしているように何もないところをなぞっているだけだ。ところが、画面にはカラフルな絵が出現して、印刷すると紙の上にちゃんと出てくる。いまだに魔法のような気がする。

ロウソク

暖冬とはいえ、クリスマスも近づくとさすがに日暮れが早く寒くなってきた。電気を消して青いガラスの円柱のロウソク立てに火を灯す。ロウソクの炎は、あたたかみがあってなごやかな気分にさせてくれる。ただ、地震が怖いので、ストックホルムのショーウィンドウのようにつけっぱなしにはできないが・・・

「赤い下駄」

児童文学の創作、翻訳家の松野正子作「A Pair of Red Clogs」を読んだ。明治大正昭和初期をおもわせる日本。マコは、ぴかぴかの赤い下駄(げた)を買ってもらってとても幸せだ。ところが、下駄を放りあげてお天気をうらなう「あした、天気になあれ」の遊びをして下駄にひびを入らせてしまい、新しい下駄を買ってほしくてわざと泥んこにするが・・・。
泥んこの下駄を洗って乾くのを見ている場面にせつない少女の心がよくあらわれている。それをやさしく見守る母の姿もいい。読み終わると、ほのぼのとした気分になる。日本語でも出版されるといいとおもう。

「オールド・スポート」

フィッツジェラルド作「グレート・ギャツビー」を村上春樹が新しく訳した。ギャツビーが、自分の理想の姿であるオックスフォード出の上流階級を装う努力をしているのを象徴する極めて重要なことばが、相手に呼びかける「old sport」だ。日本語では、相手に呼びかける習慣がないので、「あなた」でも「親友」でもどうもしっくりしない。村上訳はどうかと楽しみにしていたのに、なんと「オールド・スポート」とカタカナにしてあった。日本語に訳せないのはよく分かるが、肩すかしをくらったような気もする。まあ、カタカナでも受け入れられる土壌が日本にできているということだろうか。

北陸の旅

福井県越前海岸の東尋坊に行った。安山岩の柱状節理が1、5キロに渡って続いている。風もないのに暗青色の日本海は波が荒く、岩肌に打ちつけるたびに白い波しぶきが上がる。とてもいい天気なのにどこか陰を感じさせる風景だ。
近くにある瀧谷寺(たきだんじ)は、14世紀後半、南北朝時代につくられて以来「焼けた記録がない」という古刹。織田信長と通じて焼き討ちを免れ、柴田勝家らの寄進を受けたという歴史がある。苔むす岩と古びた木造の建物が重々しい。信長が「陣取放火」などを禁じた「禁制状」が残されている。
翌日訪れた石川県の粟津(あわづ)温泉は、奈良時代初期に開かれた北陸最古の温泉。
同時代につくられた那谷寺(なたでら)は、広大な庭園に、もっと古い縄文時代から信仰を集めたという岩山や洞窟がある。白っぽい岩壁を背景にした紅葉がきれいだった。庭内の木々は、北陸の湿った重い雪に備えて、棒をたてて綱をかけて枝をつる「雪つり」がされていて、冬が近いのを感じさせた。

シャコンヌ

ジョセフ・リンのバイオリン・リサイタルを聴きにいった。神学部でも学んだという中国系アメリカ人で、小柄で短髪で28歳より若く見えるが、演奏はなかなかスケールが大きい。ゆったりとしていると同時に繊細で、有名なバッハの「無伴奏バイオリン・パルティータ2番」の終楽章「シャコンヌ」がよかった。聴き終わって、肌寒い小雨の鬱陶しい天気にもかかわらず満ち足りた気分になった。

秋の鞍馬

京都の鞍馬寺に行った。出町柳から叡山電鉄で三十分。途中「もみじのトンネル」をゆっくりゆっくり抜けていく。今年は紅葉が遅いが、それでもところどころきれいに色づいていて赤黄緑と重なった色合いが美しい。
鞍馬山は古くから信仰を集めていて、770年に鑑真の弟子が毘沙門天をまつり、「枕草子」にも登場し、若き日の義経も修行したところ。すがすがしい秋の空気の中、真っ直ぐにそびえる杉木立の中のつづら折りの道を歩いていくと、ところどころで黄色い落ち葉がひらひらと舞い、見上げると重なった葉の間に青い空がのぞく。
下ったところは貴船神社の近くで、色づき始めた紅葉の下、水のせせらぎの音が聞こえてほっとさせられる。ここも水を司る神として古くから信仰されてきたところで特に創建の地、奥の宮には独特の雰囲気がある。宇治の橋姫が鉄輪をかぶって丑の刻参りをして男を呪ったという恐ろしい伝説がある一方、結社(ゆいのやしろ)は、コノハナノサクヤ姫の姉で妻に望まれなかったイワナガ姫が、代わりに縁結びの神になろうとしたのが起源で、縁結びの神として知られ、和泉式部もお参りしたとか。当時は、都の中心からかなり人里離れた地で、来るのもさぞ大変だったことだろう。