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クロテッド・クリーム

クリスティも書いている「デヴォンシャーのクロテッド・クリーム」を味わってみたいものだとおもっていたら、国産のものを見つけた。さっそく、小麦粉とバターと牛乳をこねたスコーンもどきを焼いて、濃いミルクティーを入れて、ジャムとクロテッド・クリームを添えた。濃厚でこってりしたクリームそのもので、それに比べると普通の生クリームを泡立てたwhipped creamが、とても軽く感じられる。優雅に気取ったイギリス貴族のティータイムというより、農家の素朴で実質的なお茶の時間という感じがした。

ヤロー

一足先に春たけなわだった沖縄名護のハーブ園に、「ヤロー」という花があった。どこかで聞き覚えがあるなあと思ったら、「A Wizard of Earthsea」(ゲド戦記「影との戦い」)の主人公、Gedの親友Vetch(カラスノエンドウ)の妹が、Yarrowという通称だった。日本語では「ノコギリソウ」という訳で、どんな花か見当がつかなかったが、紫色の小花が集まった可憐だがたくましい野の花という感じだった。昔から薬草として使われていたらしい。トロイア戦争に、アキレウスが止血剤として持っていったとホメロスが書いているそうだ。

グリーンスリーブス

「Greensleeves」は、16世紀のイギリス、エリザベス一世の時代に流行したという古い歌だが、きれいなメロディーで今も演奏される。
ある男性が、「緑の袖のドレスが似合うあなたへ」と呼びかけて、恋する女性への想いを歌うもので、そのロマンティックな雰囲気をうまく作品に取り入れているのが、Alison Uttleyの「A Traveller in Time(時の旅人)」だ。
ところが、原詩を調べてみたら、「上等なスカーフ、最高級のペチコート、宝石、金の縁どりの絹の上着、真珠を飾った金のベルト、真っ赤な絹の靴下、真っ白な靴、袖がふわっとした緑のドレス、金の房飾りがついた靴下止め、それに馬に、召使」など、贈った物を、こと細かに並べたてた挙句、「こんなに散財したのに、それでもあなたはふりむいてくれない」という、なんだか現実的な歌だった。

コルデコット

ランドルフ・コルデコットは、19世紀後半のイギリスの絵本作家。イギリス伝承童謡の話をふくらませて楽しい絵本にした絵本作家の先駆け。その絵は華やかではないが、じっと眺めていると、おもわずにこっとしてしまう。彼にちなんで、毎年アメリカで優れた絵本画家に与えられる「コルデコット賞」が設けられている。

「赤い下駄」

児童文学の創作、翻訳家の松野正子作「A Pair of Red Clogs」を読んだ。明治大正昭和初期をおもわせる日本。マコは、ぴかぴかの赤い下駄(げた)を買ってもらってとても幸せだ。ところが、下駄を放りあげてお天気をうらなう「あした、天気になあれ」の遊びをして下駄にひびを入らせてしまい、新しい下駄を買ってほしくてわざと泥んこにするが・・・。
泥んこの下駄を洗って乾くのを見ている場面にせつない少女の心がよくあらわれている。それをやさしく見守る母の姿もいい。読み終わると、ほのぼのとした気分になる。日本語でも出版されるといいとおもう。

エンデュアランス:不屈の精神

1914年、イギリスのシャクルトンを隊長とする総勢28人の探検隊は、木造の帆船エンデュアランス号で南極探検に出発したが、流氷に阻まれ南極大陸に上陸できず船も沈没して一年半漂流した挙句、奇跡的に全員生還した。それは、冬には二ヶ月も太陽が出ず真っ暗闇が続く苛酷な極寒の南極の絶望的な状況でも希望を失わず、常に危険を最初に引き受け、隊員たちを導いたシャクルトンの強いリーダーシップのおかげだ。彼は、十分な準備をした上で、最後は楽天的であることが何よりも大事だと考えていた。シャクルトンと隊員の何名かが書き続けた日記と、同行した写真家のネガが、当時の迫真の記録として残っている。せっかく生還したのに、多くはすぐに第一次大戦の戦地に赴き戦死した隊員もいるのはやりきれない思いがする。
(「エンデュアランス号漂流」新潮文庫)

いわゆる「ゲド戦記」

ゲド戦記」がアニメ化されるという宣伝が新聞に出ていたので、久しぶりに三巻を読んだ。昔はゲドを慕って読んでいたので、見知らぬ少年アレンに感情移入するのが難しく、やたらに暗い話だと思ったが、その後の巻でレバンネンとおなじみになったので、今回は、アレンつまり若き日のレバンネン中心で抵抗なく読むことができたが、改めて読み応えのある本だと思った。中表紙のルーン文字「The Rune of Ending」をあらわす最果ての地の星が印象的。年月を経て読み返して新たな発見があるのがいい本だと思う。
 それにしても、このシリーズ、最初はゲドが主人公だと思っていたので巻を追うごとにゲドの出番がなく肩透かしをくわされた感じだったが、改めて題名を見ると「A Wizard of Earthsea」「Tombs of Atuan」「The Farthest Shore」そして「Tehanu」「The Other Wind」つまり、アースシー、アチュアン、さいはての岸と地理的に遠くなり、テハヌーは空の星、最後はドラゴンの住む別世界へとアースシーの世界がどんどん広がっていく。作者の頭の中では、アースシーの地理が最初にあり、オジオンもゲドもテナーもレバンネンもその中の住人という位置付けなのだろう。今にしてみれば「ゲド戦記」という超訳がまずかったのではないか。

鉄の鍋

新しい鉄の鍋でシチューを煮ている。「ものいうなべ」のお洒落版のようだ。でもこの鍋は、山越えて金持ちさんから何か持ってきてはくれないので、シチュー用牛肉を買いにいった。それに粉をはたき焼き目をつけて、玉葱、赤ワイン、月桂樹、トマト缶と水を入れた。いつもの材料なのに、お洒落な鍋なのでお洒落に見える。弱火で煮ていると「ことこと、ことこと」音がする。音を聞いていると幸せな気分になってくる。火の回り方が柔らかいのでおいしそうに煮えそうだ。出来上がりが楽しみ。

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