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「星の王子さま」

 サン・テグジュペリ作「星の王子さま」は、子どもの頃からいつも本棚の片隅にあった。いまだに、そこにあると思うだけで、ほっとする。いろいろ新訳が出たが、昔から親しんでいるのは岩波の内藤濯訳だ。手に取ると、一つ一つのことばがどうと言うより、本全体の雰囲気に浸ってしまう。かなしいときに「すわっているいすを、ほんのちょっとうしろへひくだけで見たいとおもうたびごとに夕やけ空が見られる」王子さまの星に憧れる。
 バラの花のモデル探しや、現実社会への批判など、作者の実生活に絡めて作品を解釈するのは好きではない。ただ、先日、作者が飼っていたキツネと同じ種類の実物を映像で見る機会があった。「かんじんなことは目に見えないんだよ」と教えてくれるともだちのキツネのモデルだそうだ。耳が長く、ネコのような雰囲気のかわいいキツネで、絵の通りだった。