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アルハンブラ物語

19世紀のアメリカの作家アーヴィングの「アルハンブラ物語」を読んだ。イベリア半島に東洋の高度な文化を伝え、長い間、繁栄した後、15世紀末に滅び去ったモーロ人(イスラム系スペイン人)の最後の砦、グラナダのアルハンブラ宮殿に作者が滞在した時の旅行記だ。
荒々しいスペインのアンダルシアの平原を馬で旅して、万年雪を頂くシェラネバダを背景にそびえる石造りの無骨な城塞であるアルハンブラにたどり着くと、その奥には、モーロ人の王や姫や貴族、その後のアラゴン・カスティーリャの王や王妃が住んだ豪華な宮殿が、秘密の花園のように隠されていた。本に書かれた数々の古いモーロ人の宮殿や財宝にまつわる伝承は、作者がテンペストを引用しているとおり「夢のような素材で織りなされている」ように思われた。(岩波文庫:平沼孝之訳)