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Bill Davisの話

Bill Davisは、英国近衛兵軍楽隊のシンバル奏者の姿をした人形。
ある日、ご主人の少女Maryが、おばさまの招待を受けて出かけるときに、いつも傍にいるのにおいていかれてしまう。
Billは涙にくれるが猛然と走り出して追いかけ、終着地Doverで見事Maryをお迎えする。

おばさまから来た手紙の達筆さに比べ、Maryの返事には綴りや大文字小文字の間違いがあるが、一生懸命さが伝わってくる。
旅の荷物を何度も詰めなおす場面も身につまされる。
絵だけで話の筋が分かる本だ。

"Clever Bill" by William Nickolson,1926

virginal

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16世紀末の英国、スコットランドのメアリーと後のエリザベス一世の覇権争いの時代、バビントン家の奥方メアリーは「virginal」で、当時の新しい歌「Greensleeves」を弾く。・・・

その「virginal」の実物を見たいと思っていたら、浜松市楽器博物館に「ヴァージナル」が展示されていた。ピアノより昔に流行した小型の鍵盤楽器で、チェンバロ(英語ではharpsichord)の一種だという。
長年の疑問がひとつ解決した。

"A Traveller in Time" by Alison Uttley,1939

映画化された教科書!?

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Newton Artemis Fido Scamander(Newt Scamander)は、1897年に生まれ、Hogwartsを卒業後、the Ministry of Magicに入り、途中からthe Beast Divisionに配属され、その本領を発揮した。
1979年に、The Order of Merlinを受賞し、引退後はDorsetで妻とペット(Kneazleという猫に似た生き物)とともに暮らしているそうだ。
その孫、Rolfは、Harryたちの友人、Luna Lovegoodと結婚した。

彼の著書、"Fantastic Beasts & Where to Find Them"は、1918年に初版が出て以来、Hogwartsの教科書にも採用され版を重ねた。
このMuggle向けにも売り出された特別版には、Albus Dumbledoreの序文がついている。
これは、Harryの本のコピーなので、ところどころにRonやHermioneの書き込みがある。
ちなみに、日本に生息する生き物は、「Kappa」だそうだ。


"Fantastic Beasts & Where to Find Them" by Newt Scamander,
Obscurus Books, Comic Relief

美味しそうな「お星さま」

「お星さまひとつ プチンととって
こんがりやいて バターをぬって
それで たべたよ オコソトノ ホ
誰もしらない ここだけのはなし」

・・・と、子どもの頃から信じていた詩が、

谷川俊太郎作
「お星さまひとつ プチンともいで
こんがりやいて いそいでたべて
おなかこわした オコソトノ ホ
誰もしらない ここだけのはなし」

の覚え間違いだと判明してびっくり仰天した。

それでも、のせたバターのかたまりが溶けていく熱々の香ばしいお星さまのイメージは消えそうにない・・・。

テセウス

Shakespeare作「Midsummer Night's Dream」は、アテネ公爵シーシアスとアマゾンの女王ヒポリタの婚礼前に始まる。
シーシアス(Theseus)は、古代ギリシアで様々な冒険をした英雄テセウスで、アテナイを建国したと伝えられる。迷宮の怪物ミノタウロス退治の際、彼を助けた王女アリアドネを航海の途中で置きざりにしてしまった。その後、アマゾンの女王ヒポリタをさらって妻にした。
あまり長続きしそうにない結婚だが、これも「夢」を暗示しているのだろうか?

枯葉と影

日暮れが早い寒い秋の午後、枯葉が風に舞っているのを見ると、メアリ・ポピンズの「Hallowe'en」の話を思い出す。

10月31日、JaneとMichael、二人の子どもの手に枯葉が飛び込んできた。
その夜、二人は自分たちの影が勝手に出て行くのを見つけて追いかける。聞いたところ、その夜は、影たちが、その本体から離れて自由になれ、おまけに満月で、Mary Poppinsの誕生日の前夜という特別な晩だという。
夜の公園には、実在の人物だけでなく伝承童謡の登場人物や動物の影がたくさん集まっていた。
枯葉は、影たちの不思議なパーティーの入場券だった・・・。

元々ハロウィーンは、古代ケルトの祭りが起源だそうで、公園番によると「Things」がわらわらと出てくる少し怖い夜だという。
それが最近はオレンジ色のカボチャが店先を飾り、黒いマントで仮装する陽気な日になってしまった。

"MARY POPPINS IN THE PARK" by P.L.Travers,1952

映画化は無理

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J.K.Rowling他2名著「Harry Potter and the Cursed Child」が2016年7月31日に届いた。宅急便を玄関前で今か今かと待つのは久しぶりだった。

「Harry Potter」の映画化の主役が決まったという新聞記事を読み面白そうだと思って本屋に買いに走ったのが2000年の事なので、何と16年の歳月が経ってしまった。

その時間の流れを含めて、しばし、お馴染みの登場人物が活躍するお馴染みの魔法世界の雰囲気に浸った。Harryたちは大人になったが、何しろ魔法世界なのでSnapeまで登場したのには驚いた。
それにしても「Albus Severus」とは凄い名前だ。素直に育ちそうもない。

野うさぎのベル

「The Eagle of the Ninth」は、何年かに一度どうしても読みたくなる本の一冊だ。

舞台は2世紀のローマ属州ブリタニア。怪我をして退役したローマ人の若者マーカスは、ブリトン人の友エスカとともにハドリアヌスの壁を越え、父が最期まで守ろうとした第9軍団の旗印のワシをエピタイ族から取り戻すが、追い詰められる。絶体絶命の危機に陥ったマーカスが、それでも自分の冒険はやった価値があったと思い巡らし納得したとき、細い茎が風に吹かれながらも、挑むように頭を上げている小さな「harebell」に目が留まる。それほど青い花を見るのは初めてだった・・・。

この印象的な小さな花、「harebell」は、スコットランドのブルーベルと呼ばれる。日本語では「イトシャジン」。「シャジン」は中国由来のことばで「釣り鐘」を意味するそうだ。


”The Eagle of the Ninth ” by Rosemary Sutcliff,1954

「おとうさんの りゅう」

この本は、元気な男の子、Elmerが勇気と機知で猛獣から竜の子を助け出すという、しみじみ楽しいお話だ。日本では「エルマーのぼうけん」として知られている。

原書を読んだ時、Elmerが、最後まで"My Father"と書かれているのが気になった。作者によると、ある男の子が、自分の父親に聞いた自慢話!?を、友達に聞かせているという設定らしいが、作者も父親好きだったのだろう。


"My Father's Dragon" by Ruth Stiles Gannett,1948

"Warrior Scarlet"

題名は「戦士の緋色」。部族の少年たちは、三年間の訓練を経て狼を仕留めると一人前の戦士として認められ、戦士だけに許される「緋色」を身に纏うことができる。片腕の少年、Dolemにとってその道は遠く険しいが、狩人のTaloreや羊飼いのDoliが力になり、また忠実な愛犬、Whitethroatが寄り添う。

作者の前書きにあるように、ホメロスが描くトロイア戦争の世界のような英雄不在で、それより遥かに原始的な英国の「青銅器時代」を舞台にこれほど魅力的な人々が描かれたのが素晴らしい。

"Warrior Scarlet" by Rosemary Sutcliff, 1958