春秋座「能と狂言」を見た。
狂言「棒縛」は、野村萬斎の太郎冠者が主人の留守中、両手を棒で縛られているのに酒を飲もうと悪戦苦闘する話。
能「船弁慶」は、義経と弁慶一行が、頼朝に追われ兵庫県東部の大物(だいもつ)の浦から船出する話。
前半は、都に戻される静御前が別れの舞をまう。静の悲しみが伝わってきた。
前半と後半をつなぐ、アイの船頭は野村万作。棒一本と船を表す枠だけで、舞台が海の上になる。静かだった海が荒れ、平家の怨霊、平知盛が現れ長刀で襲いかかる。義経が剣で戦おうとするが、弁慶が法力で鎮める。
これは、能の完成者、世阿弥の子孫の作で、平家に対する鎮魂の思いがあり、応仁の乱の経験から戦いの場面が加わっているそうだ。前シテの静御前と後シテの平知盛というまったく別人を同一人物が演ずるのが面白い。
能と狂言をセットで見るのは初めてだったが、異空間に入り込んだような不思議なひとときだった。