京都府宇治市を流れる宇治川の近くにある平等院は、11世紀初め平安時代に関白藤原頼通(よりみち)が寺として開いた。翌年建てられた鳳凰堂は極楽浄土の宮殿を模したもので創建当時は極彩色の華やかなものだったそうだ。中央の阿弥陀如来像の周りを、52体の小さな「雲中供養菩薩像」が取りまいている。これらは、よく見ると琵琶などの弦楽器、鼓などの打楽器、横笛などの管楽器を持ったオーケストラだ。その他、舞いを舞っている像もあるし、旗のようなものを持った指揮者のような像もある。天上の妙なる調べを奏でているのだろう。
宇治は又、源氏物語の最後「宇治十帖」の舞台でもあるが、元々は平安貴族の別荘地で、平等院の前身も光源氏のモデルともいわれる源融(とおる)の別荘だったそうだ。「宇治十帖」の主要人物、薫の君と匂宮の名が示すとおり、蝋燭の灯りの元では香りは重要な要素だった。後世の江戸時代には、五種類の香りを当てる「源氏香」という風流な遊びもあったそうだ。
目には見えないが当時の音楽と香りを感じることができた。