Alison Uttley著「Recipes from an Old Farmhouse」という本を見つけた。19世紀後半のイギリスの農場に古くから受け継がれてきた料理が集められているが、作者の母の手書きのノートが元になっていて、当時でも古めかしいものだったそうだ。
作者の幼い頃、料理といえば、味見をしたりいい匂いをかぐのが楽しみだったが、母や手伝いの娘にとっては重労働だった。
とにかく一度につくる分量が多かった。店が近くになかったし、来客のためにもいつもたっぷり保存してあったし、友人宅の訪問にもケーキ、ジャム、肉のペースト、クリームなどを持参した。作者が子どもの頃、50人の同級生をいきなり連れてきたときにも、皆のお茶に間に合うだけの食料がたっぷりあったほどだ。
たとえば・・・
・全粒粉のお粥は、温めた牛乳と砂糖をかける。オートミールと同じだが、水を加えてオーブンに入れ何と三日間かかる。
・北欧神話の雷神トールの名がついているトールケーキは、ガイフォークスデイの夜、野外で食べる。
・たくさんの庭のリンゴを皮も芯も丸ごと水と砂糖を加えて煮て濾して緑色のピューレーにする。
・紅色のフキのようなルバーブのジャムにマーマレード、イースターのホットクロスバンズもつくる。
・スコーンは簡単なので小さい頃に母に教わったそうだ。一番素朴なつくり方の材料は、粉とバター、塩、ベーキングパウダーにサワーミルクかバターミルク。作者の母のはバターが多めで卵が入る。どちらも砂糖が入らないのが私好みで身近に感じたが、「ベーキングパウダーはもちろん自家製」とあって驚いた。
・カウスリップワインは黄色くてシェリーに似た味わいだそうだ。bilberry(コケモモの一種か)のサマープディングが作者のお気に入りだそうだが、どちらも摘むところから始まる。
・その他、自家製の薬も多かったし、庭のハーブは様々に使われる。
いずれも決して洗練され繊細なものではないが、素朴で質実剛健な農家の暮しが感じられた。ナルニアの挿絵を描いたPauline Baynesの挿絵も魅力的で、ところどころに作者の思い出もある楽しい本だ。