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枯葉と影

日暮れが早い寒い秋の午後、枯葉が風に舞っているのを見ると、メアリ・ポピンズの「Hallowe'en」の話を思い出す。

10月31日、JaneとMichael、二人の子どもの手に枯葉が飛び込んできた。
その夜、二人は自分たちの影が勝手に出て行くのを見つけて追いかける。聞いたところ、その夜は、影たちが、その本体から離れて自由になれ、おまけに満月で、Mary Poppinsの誕生日の前夜という特別な晩だという。
夜の公園には、実在の人物だけでなく伝承童謡の登場人物や動物の影がたくさん集まっていた。
枯葉は、影たちの不思議なパーティーの入場券だった・・・。

元々ハロウィーンは、古代ケルトの祭りが起源だそうで、公園番によると「Things」がわらわらと出てくる少し怖い夜だという。
それが最近はオレンジ色のカボチャが店先を飾り、黒いマントで仮装する陽気な日になってしまった。

"MARY POPPINS IN THE PARK" by P.L.Travers,1952

映画化は無理

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J.K.Rowling他2名著「Harry Potter and the Cursed Child」が2016年7月31日に届いた。宅急便を玄関前で今か今かと待つのは久しぶりだった。

「Harry Potter」の映画化の主役が決まったという新聞記事を読み面白そうだと思って本屋に買いに走ったのが2000年の事なので、何と16年の歳月が経ってしまった。

その時間の流れを含めて、しばし、お馴染みの登場人物が活躍するお馴染みの魔法世界の雰囲気に浸った。Harryたちは大人になったが、何しろ魔法世界なのでSnapeまで登場したのには驚いた。
それにしても「Albus Severus」とは凄い名前だ。素直に育ちそうもない。

野うさぎのベル

「The Eagle of the Ninth」は、何年かに一度どうしても読みたくなる本の一冊だ。

舞台は2世紀のローマ属州ブリタニア。怪我をして退役したローマ人の若者マーカスは、ブリトン人の友エスカとともにハドリアヌスの壁を越え、父が最期まで守ろうとした第9軍団の旗印のワシをエピタイ族から取り戻すが、追い詰められる。絶体絶命の危機に陥ったマーカスが、それでも自分の冒険はやった価値があったと思い巡らし納得したとき、細い茎が風に吹かれながらも、挑むように頭を上げている小さな「harebell」に目が留まる。それほど青い花を見るのは初めてだった・・・。

この印象的な小さな花、「harebell」は、スコットランドのブルーベルと呼ばれる。日本語では「イトシャジン」。「シャジン」は中国由来のことばで「釣り鐘」を意味するそうだ。


”The Eagle of the Ninth ” by Rosemary Sutcliff,1954

「おとうさんの りゅう」

この本は、元気な男の子、Elmerが勇気と機知で猛獣から竜の子を助け出すという、しみじみ楽しいお話だ。日本では「エルマーのぼうけん」として知られている。

原書を読んだ時、Elmerが、最後まで"My Father"と書かれているのが気になった。作者によると、ある男の子が、自分の父親に聞いた自慢話!?を、友達に聞かせているという設定らしいが、作者も父親好きだったのだろう。


"My Father's Dragon" by Ruth Stiles Gannett,1948

"Warrior Scarlet"

題名は「戦士の緋色」。部族の少年たちは、三年間の訓練を経て狼を仕留めると一人前の戦士として認められ、戦士だけに許される「緋色」を身に纏うことができる。片腕の少年、Dolemにとってその道は遠く険しいが、狩人のTaloreや羊飼いのDoliが力になり、また忠実な愛犬、Whitethroatが寄り添う。

作者の前書きにあるように、ホメロスが描くトロイア戦争の世界のような英雄不在で、それより遥かに原始的な英国の「青銅器時代」を舞台にこれほど魅力的な人々が描かれたのが素晴らしい。

"Warrior Scarlet" by Rosemary Sutcliff, 1958

頁岩(けつがん)

「地下の洞穴の冒険」は、原作は1950年に英国で出版されたもので、夏休みのある日、五人の少年が近くの鍾乳洞を探検する話だ。
洞穴の暗闇の中を、彼らは出口を探して進んでいく。途中で、行く手を塞ぐ「頁岩(けつがん)」を、力を合わせ「たがねとハンマー」で打ち砕く。

調べてみたら、「頁岩」とは堆積岩で、本のページ(頁)のように薄い層が重なっているので、割れやすく、又この層の中に石油が埋まっている種類があるそうだ。そして、「頁岩」は、英語で「shale」といい、その中の石油が「shale oil」なのだそうだ。
昔の物語の世界から、一気に現代世界に帰ってきた。


(「地下の洞穴の冒険」リチャード、チャーチ作、大塚勇三訳、岩波書店)

マシュー・マグの仕事

「The Story of Doctor Dolittle」は、作者が第一次大戦中の戦場から二人の子どもに送った手紙が元になっているという。

巻頭に
「TO ALL CHILDREN
CHILDREN IN YEARS AND
CHILDREN IN HEART」
(子どもたちと、子どもの心を持った人すべてに)
とある。

動物と話ができるドリトル先生は岩波の井伏鱒二訳で知られている。
子どもの頃に読んだ時、話は面白いが、「ネコ肉屋」というのが気になった。その後、原書を手に入れたところ、「Cat's-meat-Man」、つまり「キャットフードを売る人」だと分かってほっとしたものだ。


"The Story of Doctor Dolittle"by Hugh Lofting,1922

回転花火と聖女

アーディゾーニの挿絵に惹かれて、イングランド生まれのジェイムズ・リーヴズ(1909-1978)の詩集を手に入れた。
一つ一つの詩が、凝縮されたことばでそれぞれ別世界をつくっている。

その中に、夜空に一瞬華やかに咲いて散る花火をうたった「花火」という詩があり、「catherine-wheel」、つまり「キャサリン(カタリナ)の車輪」ということばが出てきた。

聖カタリナといえば、4世紀に棘のついた車輪による拷問を受けるところを天使に助けられ、その後、殉教したエジプトの王女である。調べたら「回転花火」という意味だった。花火とは関係ない聖女の歴史も連想させられて、短いが奥行きが感じられる作品だった。


'Fireworks',"The Blackbird in Lilac"(1952),
"Complete Poems for Children" by James Reeves and Edward Ardizzone, 1973

「トーベ・ヤンソン展」

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トーベ・ヤンソン(1914-2001)は、スウェーデン系フィンランド人である。ムーミンの作者として有名だが、油絵もずっと描き続けていた。何枚も残る自画像には、意志の強い自立した女性の姿がよく表されている。
政治風刺雑誌のイラストやアリスの挿絵などの他、十数センチ四方の小さな紙にペンで描かれたムーミンの挿絵がたくさん展示されていた。

ムーミンは小さい種族である。
ムーミン・シリーズには、ムーミン一家の他に、スノークのおじょうさん、スナフキンとちびのミイの兄妹、ヘムレンさん、フィリフヨンカ、そして作者のパートナーだったトゥーリッキをモデルにした「おしゃまさん」(トゥーティッキ)など個性的な面々が登場する。作者が夏を過ごしたクルーヴハル島の映像を見ながら、彼らは、あの広大で厳しく美しいフィンランドの自然から生まれたのだとしみじみ思った。

「カニ」は「ウサギ」!?

英国のポター作「ピーターラビット」は、フィンランド語で「ペッテリカニ」と言うそうだ。「カニ」が「ウサギ」の意味なのは面白い。

同じウサギでも、オランダのブルーナ作「うさこちゃん」は「Miffy」としても知られているが、本名は「ナインチェ」(Nijntje)だ。

有名人(いや、人ならぬウサギ!)ともなると、この他にも世界中で色々な呼び名があることだろう。
ちなみに、両方とも日本では石井桃子訳である。