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「Little White Horse」

孤児になった Maria は、英国南西部の美しい谷、Moonacre で、自分の先祖の Moon Princess にまつわる謎を解決する使命を果たし、すべてを幸せにする。

昼間は、ピンクのゼラニウムと、Marmaduke の作るおいしそうな料理に代表され明るく色彩豊かだが、夜は、黒と銀色の神秘的な世界に描かれる。

「daffodils(ラッパスイセン)が、月の魔術で金色を奪われ、細い銀の茎の上に銀のラッパを掲げている」という風景の中を不思議な白馬が駆けていく。

「Little White Horse」by Elizabeth Goudge 1946

No more twist!

クリスマスの絵本の中で好きな本の一つが
「The Tailor of Gloucester(グロースターの仕立て屋)」だ。

イギリスには、クリスマスイブに大聖堂の鐘が鳴り始めてから翌朝に鳴り終わるまでは、すべての動物が話すことができるという言い伝えがあったそうだ。このお話では、その間に、病気になった仕立て屋のかわりにネズミたちが仕事を引き受けてくれる。

捕まえておいたネズミを仕立て屋が逃がしたことを知って、ネコのシンプキンは怒って「twist」を隠してしまう。「twist(より糸)」は、糸をよって作るという製法からきているが、日本語では、ボタン穴をかがるという用途から「穴糸」という。「twist」が足りなかったボタン穴を残して、ネズミたちがこっそり仕上げた上着の刺繍の絵も素晴らしい。

(「The Tailor of Gloucester」by Beatrix Potter)

ギリシア神話雑感

ギリシア神話は、ギリシアが大好きなローマ人によって、ローマ土着の神話と重なりながら、文学、彫刻に残された。その後、現代に至るまで美術や文学の題材となっているし、「トロイの木馬」というコンピューターのウィルス名もある。

ギリシア神話に登場する女性といえば、美しくて英雄に助けられたりゼウスに誘拐されたりする役回りが多い中で、知恵あるメデイアは、アルゴ号で金羊毛を取りに行ったイアソンを助けたが、魔女であり希代の悪女として描かれる。一方、女神たちは、ヘラ、アテナ、アルテミス、アフロディテと勇ましくのびのびしている。

「カエルはカエル」

「Kikker is Kikker」(Max Velthuijs作)という絵本をオランダ土産に貰った。

カエルが、友だちのアヒルのように飛べないし、ブタのように美味しいケーキが焼けないし、ノウサギのように本が読めないと落ち込むか、ノウサギに「君は、すてきな緑色だし泳げるし跳べるじゃないか」と言われて、自分の個性に気づいて元気になるという話らしい。

蛙は、英語「frog」、フランス語「grenouille」、ドイツ語「frosch」、イタリア語「rana」だそうだ。辞書を引いても活用形が違うのでさっぱり分からないオランダ語だったが、この単語に関しては「k」音で始まるところが日本語と同じで少し親近感を感じた。

puffin

福島県の水族館「アクアマリンふくしま」に、エトピリカ(Tufted Puffin)がいた。ペンギンと同じように黒と白だが、ころっとした体型で橙色の嘴が印象的だ。「PUFFIN BOOKS」は「PENGUIN BOOKS」の児童書なので、パフィンはペンギンの子どもだと長いあいだ思っていたが違う種類だった。

糸紡ぎ

パイを5つ食べてしまったのを、糸を5かせ紡いだと誤解された怠け者の娘が王妃になる。代わりに糸を紡いでくれた黒い小人の名前を当てるはめになり、困った王妃の話が、イギリス民話のトム・ティット・トットである。麻でなく羊毛だが、ほんの少し紡いでみて、その大変さが分かった。確かに糸を紡ぐより名前を考えた方が楽そうだが・・・。

ライオンハート

ロビンフッドの話に登場するリチャード一世は「獅子心王」と呼ばれる。「Ivanhoe」の中では「Coeur De Lion」と呼ばれていた。ノルマンなのでフランス語。英語では「Richard the Lionhearted」になる。確かに直訳だ。

「Ivanhoe」覚え書き

英国のSir Walter Scott作「Ivanhoe」は、アーサー王伝説、ロビンフッド伝承、シェイクスピアなど取り入れた中世騎士物語の古典である。

舞台は、12-13世紀イングランド。獅子心王リチャード一世が十字軍遠征で囚われの身になった隙に、王弟ジョンが王位簒奪を企てる不穏な世の中で、サクソンとノルマンの対立が続いている。

騎士の鍛錬と娯楽を兼ね、ジョンが盛大な槍試合を開いた折、個人戦、団体戦共にアイヴァンホーと名乗る騎士が勝ち、その名誉をサクソンの姫ロウィーナに捧げる。

アイヴァンホーは、実はサクソンの族長の息子だが、ノルマンのリチャードに仕える騎士になったため父から勘当されている。服装など文化が違うし騎士になると封土を献上しなくてはならないからだ。

アイヴァンホーが助け、又助けられたユダヤ人の高利貸しイサクは、キリスト教徒からもイスラム教徒からも嫌われ蔑まれているが、ジョンや修道院長や貴族に金を貸す大金持ちだ。シャイロックを彷彿とさせる。

もめ事は一対一の試合で解決する。ノルマンの騎士は、手袋を投げるのが挑戦のしるしで槍と剣を使う。サクソンは斧。森人は弓矢や六尺棒(quarter staff)を使う。

ロクスリー、実は伝説の義賊ロビンフッドが魅力的。弓の名手で、ヤナギの枝を立てたものを的にして、真ん中に命中させ枝を真っ二つに裂く。敵に対し「クリスマスのベーコンの塊に刺したクローブのように矢で串刺しにしてやる」の例えが面白い。バラッドでしか伝わっていないロビンフッドのイメージ形成に、この作品が影響を及ぼした。

リチャードは女嫌いの冒険好きで政治にはあまり興味がなさそう。王に対する作者の皮肉な視線も感じられる。

若い頃にサクソンの父兄を殺され、ずっと囚われの身となっているウルリカは火事を起こして復讐を果たすが、同世代の騎士は現役なのに「老婆」扱いなのが悲しい。ちなみに、その過酷な運命は、サトクリフ「ともしびをかかげて」のアクイラの妹フラビアも同じだが比べるとフラビアは幸せになった方ではないかと思われる。

ユダヤ人の高利貸しイサクの娘、美しいレベッカは、医薬の知識を持ち、テンプル騎士の求愛を拒絶し続けたため火あぶりの刑を宣告される。アイヴァンホーに槍試合で助け出されるが、その誇り高い姿が印象的。

「サクソンとノルマンが融合し英語が話されるのは、後のエドワード三世の時代である」で話は終わる。ノルマン優位だが、言語などにサクソン文化も交わってイングランドひいては現在の英国に繋がっていったのが良く分かる。

'Ivanhoe' Sir Walter Scott1819

ヤギ

スイスの絵本作家ホフマンの原画は、透き通るような色彩だった。病気の子どもの為にグリム童話を絵本にしたのが最初だそうだ。4人の子どもたち各々に宛てた手作り絵本は愛情に溢れていた。

「7ひきのこやぎ」の母ヤギが、オオカミに負けない程しっかりして強そうなのが印象的だった。そういえばノルウェーの昔話「3びきのやぎのがらがらどん」や、ノルウェーの農場生活を描いた「小さな牛追い」「牛追いの冬」でも、ヤギは強かった。

緑色二種

ロビンフッドは、12、13世紀の中世イギリスの伝承の人物。シャーウッドの森に仲間を集めて活躍したといわれる。衣服の色は、明るい緑色と訳されるが、元は「Lincoln green」。Lincoln特産の生地だそうだ。敵の中に「Kendal green」の衣服を着た一派がいた。こちらは灰色がかった緑色だそうだ。どちらも緑の森に相応しい。

'The Adventure of Robin Hood' by Roger Lancelyn Green 1956