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第65回正倉院展

今年の正倉院展で良かったものは、まず「漆金箔絵盤(うるしきんぱくえのばん)」。これは、上に香を炊く炉盤を載せるための台座。色とりどりの鳥や花が描かれている金箔の木の花びらを何枚も重ねてハスの花のように仕立ててある。

「鯨鬚金銀絵如意(げいしゅきんぎんえのにょい)」は、珍しいクジラのヒゲで作られた孫の手のようなもの。黒柿製の外箱ともに、様々な絵で飾られている。

「蘇芳地金銀絵箱(すおうじきんぎんえのはこ)」は黒っぽい赤の箱で、外側内側が金銀の絵で飾られているだけでなく、底にまで鳳凰と獅子が描かれている。

「斑犀把紅牙撥鏤刀子(はんさいのつかこうげばちるのさやのとうす)」は、10センチほどの鉛筆より細い小刀。柄はサイの角で作られ、鞘は象牙に赤く彩色してから模様を彫って下の白を出す「撥鏤(ばちる)」という技法が使われている。実用でなく貴族のアクセサリーらしい。

「投壺(とうこ)」というのは、壺に矢を投げ入れる貴族の宴席のゲームだそうだ。

どの品にも精緻な絵や模様が描かれ、中には拡大鏡でも見えないほど細かく描かれたものもある。その精密さは、宝物の外箱や袋や、供物を載せる台にも及んでいる。

古文書の展示の中には、写経生の仕事量と報酬や、借金の記録もある。その後に展示された見事に書かれた写経を見ていると、写経生の仕事や生活の苦労がしのばれる。

毎度のことながら、漢字ばかりの宝物名を読むのに苦労したが、1200年以上前の宝物や古文書を修復しつつ大切に伝えてきた先人の熱意が迫ってきた。