「だまし絵」とは「見る者の目をあざむく仕掛けを持った作品」だ。
16世紀、ミラノ生まれの画家、アルチンボルドの「ルドルフ2世」は野菜果物を並べただけなのに遠くから見ると肖像画になっている。17世紀のバロック時代に流行した「トロンプルイユ」という手法で描かれたものは、平面なのに立体感があり実物そっくりに浮き上がって見える。板に赤いテープを鋲で止め手紙や羽ペンや眼鏡を挟んであるものや、檻の金網から鼻を突き出す子犬や、ガラスの向こうのオウムなど、キャンバスに描かれた絵とは思えない。19世紀の日本でも、掛け軸からはみ出そうな幽霊や、歌川国芳の浮世絵の人体で顔を描いたものがある。20世紀のエッシャーに至るまで、いろいろな作品があったが、画家の方も高度な技術を駆使して、いかに観客を騙せるかを楽しんでいるように思われた。