源氏物語千年紀を記念した「源氏物語の世界」展に行ってきた。
まじめなほうでは、本居宣長(もとおりのりなが)が「もののあはれ」を説いた源氏物語の注釈書「玉の小櫛」(たまのおぐし) が展示されていた。それとともに、生霊になった六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)と光源氏のなれそめを源氏物語の文体をまねて書いた補作も展示されていた。彼は、「源氏オタク」だったようだ。
高貴な身分の姫の嫁入り道具に、「源氏」とかいた手鏡や、各場面を描いた伊達家の駕籠(かご)や、源氏物語の豪華な写本があった。ただし読まれた形跡がないものもあったらしい。かたや、高級遊女、おいらんは、教養として、源氏物語を読んでいて、それが、浮世絵にもなっている。姫より遊女のほうが、教養が高い場合もあったようだ。
「偽紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)」は、王朝の原作を室町時代に時代を移したものだが、それを浮世絵では、江戸の風俗、人気歌舞伎役者の顔で描かれ、人気を博した。国は違うが、シェークスピア作品を、イケメン俳優が主役の現代劇にした写真集といったところだろうか。
源氏物語が、江戸時代に、写本、絵巻、屏風、浮世絵、かるたなどで、上流階級から庶民まで親しまれていたのがよくわかった。