ローマ帝国の武将、ユリウス・カエサルの作で、実際に戦った本人の手記ならではの臨場感にあふれている。
三人称の記述にもかかわらず、ラビエヌス、青年クラッスス、ブルトゥスなどを信頼しているのが分かる。けれど、副将ラビエヌスは、ルビコンでたもとを分かつし、クラッススは父の元に赴き戦死するし、ブルトゥスに至っては、カエサル暗殺に関わるし…と、その後を考えながら読むと複雑なものがある。
カエサルは、いざというときは百人隊長一人一人に呼びかけ、鼓舞し、賞讚するなど、人身掌握が巧みで、また集めた情報を元に、迅速な作戦をたて、戦場で臨機応変に対処する抜群の指導力を持つ。そして、厳しい訓練を受けている軍団は、そのすばやい指示にこたえることができる。
特に、ゲルマン人の前で短期間でライン河に橋をかけて全軍を渡らせ、その後、壊してしまう場面の、技術力、組織力がすごい。
(「ガリア戦記」カエサル、國原吉之助訳、講談社学術文庫)