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秋の鞍馬

京都の鞍馬寺に行った。出町柳から叡山電鉄で三十分。途中「もみじのトンネル」をゆっくりゆっくり抜けていく。今年は紅葉が遅いが、それでもところどころきれいに色づいていて赤黄緑と重なった色合いが美しい。
鞍馬山は古くから信仰を集めていて、770年に鑑真の弟子が毘沙門天をまつり、「枕草子」にも登場し、若き日の義経も修行したところ。すがすがしい秋の空気の中、真っ直ぐにそびえる杉木立の中のつづら折りの道を歩いていくと、ところどころで黄色い落ち葉がひらひらと舞い、見上げると重なった葉の間に青い空がのぞく。
下ったところは貴船神社の近くで、色づき始めた紅葉の下、水のせせらぎの音が聞こえてほっとさせられる。ここも水を司る神として古くから信仰されてきたところで特に創建の地、奥の宮には独特の雰囲気がある。宇治の橋姫が鉄輪をかぶって丑の刻参りをして男を呪ったという恐ろしい伝説がある一方、結社(ゆいのやしろ)は、コノハナノサクヤ姫の姉で妻に望まれなかったイワナガ姫が、代わりに縁結びの神になろうとしたのが起源で、縁結びの神として知られ、和泉式部もお参りしたとか。当時は、都の中心からかなり人里離れた地で、来るのもさぞ大変だったことだろう。