記事一覧

エンデュアランス:不屈の精神

1914年、イギリスのシャクルトンを隊長とする総勢28人の探検隊は、木造の帆船エンデュアランス号で南極探検に出発したが、流氷に阻まれ南極大陸に上陸できず船も沈没して一年半漂流した挙句、奇跡的に全員生還した。それは、冬には二ヶ月も太陽が出ず真っ暗闇が続く苛酷な極寒の南極の絶望的な状況でも希望を失わず、常に危険を最初に引き受け、隊員たちを導いたシャクルトンの強いリーダーシップのおかげだ。彼は、十分な準備をした上で、最後は楽天的であることが何よりも大事だと考えていた。シャクルトンと隊員の何名かが書き続けた日記と、同行した写真家のネガが、当時の迫真の記録として残っている。せっかく生還したのに、多くはすぐに第一次大戦の戦地に赴き戦死した隊員もいるのはやりきれない思いがする。
(「エンデュアランス号漂流」新潮文庫)