「風そよぐ ならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける」
(藤原家隆)
上賀茂神社の「ならの小川」で陰暦六月、今の八月に行われた「みそぎ」の神事を歌ったものという。夏になると思い出す歌だが、現代の暑苦しさに比べなんとさわやかなことか。
この歌のせいで、ずっと憧れていた上賀茂神社に今年の六月に行くことができた。京都でも最古の神社の一つといわれる境内には、緑の木々が茂り、苔むす岩の側に、ならの小川が流れていたが、長い時を経た落ち着いた独特の雰囲気が感じられた。静かさの中に何かの気配を感じたような気がしたのは、「陰陽師」の読み過ぎか。