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京都御所

 京都御所は、毎年この時期に一般公開される。ここは、794年に桓武天皇が建てた場所とは少し違い、当時は、土御門東洞院殿(つちみかどひがしのとういんどの)といわれた場所で、今から670年ほど前の鎌倉時代末1331年に、ここに移された。その間、何度も火災にあい、今の建物は、ほとんど江戸末期の1855年に再建されたものだ。それでも、右近の橘、左近の桜が美しい紫宸殿や、清涼殿といった建物を見ていると、平安の昔がしのばれる。
ただ、入るときには手荷物検査をされ、いたるところに「宮内庁」の腕章が目立ち、「御所」が過去の歴史ではなく、現在のものでもあるのが感じられた。
 鴨川沿いに、三条から北山を眺めながら散歩した。特に、高野川の桜はきれいだった。

「東風吹かば匂いおこせよ梅の花…」

京都の北野天満宮は、梅の花が満開だった。梅は、桜ほど派手ではないが、紅梅、白梅と並ぶと、春が来た喜びを控えめな中にも華やかに告げている。天満宮は、今でこそ「学問の神様」として、全国で平和に信仰されているが、平安時代、この歌を残して福岡の大宰府に左遷された菅原道真の霊を鎮めるために建立された当時の北野天満宮は、さぞ凄まじい「気」に満ちていたことだろう。去年、訪れた大宰府天満宮の方は、同じ道真を祭っていても、のびやかで明るい感じがした。荒れた天候などを、怨霊になった道真のたたりだと信じた京の都人(みやこびと)は、よほど後ろめたかったのだろうか。

秋の鞍馬

京都の鞍馬寺に行った。出町柳から叡山電鉄で三十分。途中「もみじのトンネル」をゆっくりゆっくり抜けていく。今年は紅葉が遅いが、それでもところどころきれいに色づいていて赤黄緑と重なった色合いが美しい。
鞍馬山は古くから信仰を集めていて、770年に鑑真の弟子が毘沙門天をまつり、「枕草子」にも登場し、若き日の義経も修行したところ。すがすがしい秋の空気の中、真っ直ぐにそびえる杉木立の中のつづら折りの道を歩いていくと、ところどころで黄色い落ち葉がひらひらと舞い、見上げると重なった葉の間に青い空がのぞく。
下ったところは貴船神社の近くで、色づき始めた紅葉の下、水のせせらぎの音が聞こえてほっとさせられる。ここも水を司る神として古くから信仰されてきたところで特に創建の地、奥の宮には独特の雰囲気がある。宇治の橋姫が鉄輪をかぶって丑の刻参りをして男を呪ったという恐ろしい伝説がある一方、結社(ゆいのやしろ)は、コノハナノサクヤ姫の姉で妻に望まれなかったイワナガ姫が、代わりに縁結びの神になろうとしたのが起源で、縁結びの神として知られ、和泉式部もお参りしたとか。当時は、都の中心からかなり人里離れた地で、来るのもさぞ大変だったことだろう。

時代祭り

京都三大祭りの一つ「時代祭り」を見にいった。これは、明治時代に平安神宮ができたときに始まったので、葵祭り、祇園祭りに比べると歴史的にはずっと新しい。延暦13年(794年)10月22日に桓武天皇が平安京に遷都したのにちなみ、この日に毎年行われる。祭りのメインは、明治時代から歴史を順にさかのぼって平安時代初めまでの華やかな装束をまとった人たちの、要するに仮装行列だ。牛車や騎馬も含む総勢二千人が、京都御所から平安神宮までぞろぞろ歩いていくが、最後列まで延々二キロも続くという行列は、なかなか壮観だ。南北朝、室町時代を楠正成中心の「吉野時代」、平安時代を「藤原時代」「延暦時代」と分けているのが、さすが京の都。

二条城

 京都の二条城は、1603年徳川家康が将軍上洛の宿泊所として建て三代将軍家光の時に完成したもので、桃山文化の粋を集めた徳川幕府の権勢を象徴する建物だ。その後、1867年十五代将軍慶喜の大政奉還により朝廷のものとなり、1939年からは京都市の所有になっている。慶喜が大政奉還を発表した大広間を眺めていると当時の歴史が身近に感じられる。
 春に京都御所を訪れたときは、平安時代の雰囲気が漂っていたが、そこから近いのにここは江戸時代の雰囲気だ。それぞれ、塀で囲った敷地の中に当時の空気もそのまま閉じ込められているようだ。

ならの小川

 「風そよぐ ならの小川の夕暮れは みそぎぞ夏のしるしなりける」
(藤原家隆)
上賀茂神社の「ならの小川」で陰暦六月、今の八月に行われた「みそぎ」の神事を歌ったものという。夏になると思い出す歌だが、現代の暑苦しさに比べなんとさわやかなことか。
 この歌のせいで、ずっと憧れていた上賀茂神社に今年の六月に行くことができた。京都でも最古の神社の一つといわれる境内には、緑の木々が茂り、苔むす岩の側に、ならの小川が流れていたが、長い時を経た落ち着いた独特の雰囲気が感じられた。静かさの中に何かの気配を感じたような気がしたのは、「陰陽師」の読み過ぎか。

大文字

昨日、京都の「大文字五山送り火」の東山の大文字を見にいった。午後8時になると真っ暗な中に徐々に火がつき「大」の字がくっきりと浮かび上がる。その後三十分ほどたつと火が消えた。元々お盆の送り火なので、花火と違ってお祭り騒ぎではなく、夏の終わりを感じさせる落ち着いた雰囲気のものだった。帰りの出町柳の駅の喧騒で、しっかり俗世間の現実に引き戻されてしまったが・・・

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