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頁岩(けつがん)

「地下の洞穴の冒険」は、原作は1950年に英国で出版されたもので、夏休みのある日、五人の少年が近くの鍾乳洞を探検する話だ。
洞穴の暗闇の中を、彼らは出口を探して進んでいく。途中で、行く手を塞ぐ「頁岩(けつがん)」を、力を合わせ「たがねとハンマー」で打ち砕く。

調べてみたら、「頁岩」とは堆積岩で、本のページ(頁)のように薄い層が重なっているので、割れやすく、又この層の中に石油が埋まっている種類があるそうだ。そして、「頁岩」は、英語で「shale」といい、その中の石油が「shale oil」なのだそうだ。
昔の物語の世界から、一気に現代世界に帰ってきた。


(「地下の洞穴の冒険」リチャード、チャーチ作、大塚勇三訳、岩波書店)

マシュー・マグの仕事

「The Story of Doctor Dolittle」は、作者が第一次大戦中の戦場から二人の子どもに送った手紙が元になっているという。

巻頭に
「TO ALL CHILDREN
CHILDREN IN YEARS AND
CHILDREN IN HEART」
(子どもたちと、子どもの心を持った人すべてに)
とある。

動物と話ができるドリトル先生は岩波の井伏鱒二訳で知られている。
子どもの頃に読んだ時、話は面白いが、「ネコ肉屋」というのが気になった。その後、原書を手に入れたところ、「Cat's-meat-Man」、つまり「キャットフードを売る人」だと分かってほっとしたものだ。


"The Story of Doctor Dolittle"by Hugh Lofting,1922

回転花火と聖女

アーディゾーニの挿絵に惹かれて、イングランド生まれのジェイムズ・リーヴズ(1909-1978)の詩集を手に入れた。
一つ一つの詩が、凝縮されたことばでそれぞれ別世界をつくっている。

その中に、夜空に一瞬華やかに咲いて散る花火をうたった「花火」という詩があり、「catherine-wheel」、つまり「キャサリン(カタリナ)の車輪」ということばが出てきた。

聖カタリナといえば、4世紀に棘のついた車輪による拷問を受けるところを天使に助けられ、その後、殉教したエジプトの王女である。調べたら「回転花火」という意味だった。花火とは関係ない聖女の歴史も連想させられて、短いが奥行きが感じられる作品だった。


'Fireworks',"The Blackbird in Lilac"(1952),
"Complete Poems for Children" by James Reeves and Edward Ardizzone, 1973

「トーベ・ヤンソン展」

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トーベ・ヤンソン(1914-2001)は、スウェーデン系フィンランド人である。ムーミンの作者として有名だが、油絵もずっと描き続けていた。何枚も残る自画像には、意志の強い自立した女性の姿がよく表されている。
政治風刺雑誌のイラストやアリスの挿絵などの他、十数センチ四方の小さな紙にペンで描かれたムーミンの挿絵がたくさん展示されていた。

ムーミンは小さい種族である。
ムーミン・シリーズには、ムーミン一家の他に、スノークのおじょうさん、スナフキンとちびのミイの兄妹、ヘムレンさん、フィリフヨンカ、そして作者のパートナーだったトゥーリッキをモデルにした「おしゃまさん」(トゥーティッキ)など個性的な面々が登場する。作者が夏を過ごしたクルーヴハル島の映像を見ながら、彼らは、あの広大で厳しく美しいフィンランドの自然から生まれたのだとしみじみ思った。

「カニ」は「ウサギ」!?

英国のポター作「ピーターラビット」は、フィンランド語で「ペッテリカニ」と言うそうだ。「カニ」が「ウサギ」の意味なのは面白い。

同じウサギでも、オランダのブルーナ作「うさこちゃん」は「Miffy」としても知られているが、本名は「ナインチェ」(Nijntje)だ。

有名人(いや、人ならぬウサギ!)ともなると、この他にも世界中で色々な呼び名があることだろう。
ちなみに、両方とも日本では石井桃子訳である。

"Puck of Pook's Hill"

夏至の前日に、英国南部サセックス州で、兄妹がシェイスピアの「夏の夜の夢」を演じていたら、本物のパックが現れた。

彼は、夏至から晩秋にかけて、4世紀の古代ローマの百人隊長、11世紀のノルマンの騎士、13世紀のマグナ・カルタ制定に関わったユダヤ人、そして16世紀のルネッサンス人を呼び出して、子どもたちが今いる場所がどんな風だったか、そしてどのようにして「イングランド」ができてきたのかを教えてくれる。

ところで、「マグナ・カルタ(大憲章)」は、1215年に、当時のジョン王が王権の制限を受け入れたもので、現在の英国憲法にも生かされているという。今年の6月15日に、その制定後、800年になる記念式典が、エリザベス女王やキャメロン首相も出席して行われたというニュースがあった。パックが見てきた英国の歴史は今も続いている。

"Puck of Pook's Hill"1906 by Rudyard Kipling

「アンガスとあひる」

主人公は、スコテッシュ・テリアの子犬、「Angus」。
アンガスというのはケルト神話の神様の名前らしい。

好奇心いっぱいのアンガスは、ある日、こっそり外へ出て
「Quack! Quack! Quackety! Quack!!」と鳴くあひるに出会います。
アンガスが「WOO-OO-OOF!!!」と言うと、あひるは逃げました。
ところが、あひるは「HISS-S-S-S-S-S-S!!!」と向かってきました。
アンガスは、しっぽを巻いて逃げかえり、椅子の下に隠れました。
そして、きっかり三分間は何にも興味を持ちませんでした。

・・・というお話。
とにかくアンガスが可愛い。

"Angus and the Ducks" by Marjorie Flack,1930

どんどん小さく・・・

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ポータブル・ラジオ・レコーダーが仲間入りした。
ラジオ番組を録音するのに、プー式に言えばまことに「ちょうほうな」ものだ。並べてみると携帯が大きく見える。

かつら文庫

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荻窪の「かつら文庫」を尋ねた。閑静な住宅街にある居心地の良い場所で、この近くに住んでいた子どもは幸せだと思った。
石井桃子さんの書斎も保存されていて、プーで育った私にとって遠い世界の人だった「児童文学者石井桃子」が身近に感じられた。

アーディゾーニ(AZ)展

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教文館ナルニア国のアーディゾーニ展を見た。
まずは「チムとゆうかんなせんちょうさん」のチムシリーズ。
荒海の難破船から助けられる場面など原画の勢いが素晴らしい。。
初版は、文も作者の手書きの筆記体だった。表紙の背景も筆で塗られていた。

ファージョン、ピアスなどの線画の挿絵が好きだが、お気に入りは、デ・ラ・メアの詩集、「Peacock Pie」だ。挿絵が詩の魅力を、よりいっそう引き立てている。会場に「良い詩は、読むと絵が鮮明に浮かぶ」というような作者のことばがあった。長年ペアを組んだJames Reevesの詩集も読んでみたいと思ったが、残念ながら絶版らしい。

長年にわたり、毎年、友人に宛てたクリスマスカードも展示されていた。
どれもこれも作者が楽しんで描いているのが良く分かるものばかりで、見ていて楽しかった。