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薄謝

Poohは、ロバのEeyoreのしっぽを見つける方法を、 物知りのOwlに聞きに行く。
Owlは、しっぽを見つけた者に 'Issue a Reward'を提案するのだが、それをPoohは 'atishoo!'と聞き間違え、話の途中でくしゃみをしたので分からなかったと頓珍漢な会話になっていく。
石井桃子訳では、「薄謝を贈呈する」となっていて「ハクシャ」が「ハクション!」を連想させる。これは名訳だと思う。

'In which Eeyore loses a tail and Pooh finds one',
"Winnie-the-Pooh" by A.A.Milne'

プロセルピナ

James Reeves作の 'Pluto and Proserpine'という詩がある。

黄泉の国の王プルートがプロセルピナに求婚する。
私の女王になるなら結婚指輪を与えようというプルートに、
プロセルピナは、黄泉の国には花や鳥の声や子どもの笑いや日の光があるかと問う。
どれも無いと言われた彼女は、
「花や鳥や日の光には飽きたし、私は暗闇は怖くないから、あなたと結婚して、笑いがない人たちを慰めてあげるわ」と答える・・・という内容だ。

神話では、問答無用でさらわれて黄泉の国の女王になるプロセルピナだが、この詩では、彼女が求婚を納得して受け入れるというのが良かった。

'Blusterous day'

先月の台風は恐ろしく風が強かった。その後、川岸の松の木が根こそぎ倒れていたのを見て、Poohの話を思い出した。Owlによれば'Blusterous day'、つまり「暴風が吹き荒れる日」の話である。

PoohとPigletが、風の強い秋の木曜日に 木の洞にあるOwlの家にいると、突然その木が倒れた。いまや床が壁になり、壁が天井になってしまった家の中で、Poohの思いつきにより、Pigletが天井にある郵便受けから抜け出し助けを呼びにいく。臆病なPigletの一世一代の大活躍である。その間、Owlは伯父の話を延々と続けていた・・・。

昔から楽しく読んできたが、挿絵を見ながら読み返してみると、かなり大変な状況である。
そういえば以前、大雨で家に閉じ込められたPigletを、やはりPoohの素晴らしい思いつきで助け出す話もあったし、大雪もあった。のどかな理想郷に思われる「the Hundred Acre Wood」だが、時には気候が荒々しくなるようだ。


'In which Piglet does a very grand thing',
"The House at Pooh Corner" by A.A.Milne

Georgeの別名

ドイツ生まれのレイ夫妻が、パリで創り出した小猿は「Fifi」と名付けられた。夫のハンスが描き、妻のマーガレットが話を書き、二人は、その原稿を持って第二次大戦中にアメリカに移住した。

戦後、それが絵本として出版されるとき、その小猿は「George」という名前になった。
その後、イギリスで出版されるときは、時の国王と同じ名前になってしまうので「Zozo」と変えられ、しっぽが付け加えられた。当時、イギリスでは、しっぽがあるのが「monkey」で、ないのは「ape」と区別されていたからだそうだ。

日本では「ひとまねこざる」として岩波から出版された。最初は縦書きで、スパゲッティが「うどん」と訳されていた。隔世の感がある。けれど、知りたがりやで大騒動を巻き起こすジョージの憎めない可愛さは、年月が経っても変わらない。

"Curious George Takes a Job" by H.A.Ray,1947

ロープの結び方

船をロープで岸につなぎとめる時の特別な結び方を、「a bowline knot」というそうだ。作者が描いた挿絵を見ながらやってみたが、なかなか難しい。

ジョンは、海軍中佐の父に仕込まれていたので、手際よく結ぶことができた。その父のような熟練の船乗りともなると、手首を二ひねりしただけで片手で結んでしまった。

これは「もやい結び」といって、現代の日本でも様々な場面で使われる結び方だそうだ。


"We Didn't Mean to Go to Sea" by Arthur Ransome,1937

「なぞの鳥」の正体は?

英国のアーサー・ランサム作の『シロクマ号となぞの鳥』(岩波)は原題を『Great Northern?』という。「大きな北方の?」では何のことか分からないが、実は「Great Northern Diver」という鳥の名前を略したものである。

「Diver」とは、「ダイバー」の名が表すように潜るのが得意な渡り鳥で、Red-throated Diver、Black-throated Diver、Great Northern Diverなどの種類があるそうだ。

その中で、英国では巣を作ることはないと思われていたGreat Northern Diverの巣と卵を、少年ディックがスコットランドの島で見つけたことから話が始まる。

日本ではなじみが薄い鳥だが、ディックの熱意のおかげで読み終わる頃には親しみがわいてきた。

"Great Northern?" by Arthur Ransome,1947

ねこといぬと子どもの絵

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渋谷の松涛美術館で、「チャペック兄弟と子どもの世界展」を見た。

チェコのヨゼフ・チャペック(1887-1945)作、絵の「こいぬとこねこのおかしな話」は、チェコの国中で愛読されてきたそうだ。
弟カレルは「長い長いお医者さんの話」などの児童書の他、戯曲「ロボット」も書いている。
それを「人造人間」という題で築地小劇場で上演した時のポスターも展示されていた。「ロボット」ということばは、兄が創ったそうだ。

兄の描いたねこや子ども、弟の愛犬ダーシェンカなどどれも暖かくて楽しい絵だった。けれど、弟の病死後、兄は収容所で亡くなったといわれる。ペンや絵筆でナチスに抵抗したその絵は、ほんわかと優しいが、一本筋が通った奥深さを秘めていた。

プーの本名は?

有名なテディ・ベアの一つが「Winnie-the-Pooh」(クマのプーさん)である。
(ただし、ディズニーでなく原作の方に限る。)
ぬいぐるみのクマをテディ・ベア(teddy bear)と呼ぶのは、20世紀初めの狩猟好きの米大統領、セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)の愛称「Teddy」からきているらしい。

ところが、原作では、プーは「Edward Bear」となっている。
最初に読んだとき、プーの本名がエドワードなのだろうかと不思議に思ったものだが、当時の英国では、そう呼んだのだろうか。
テディにせよエドワードにせよ、いずれにしてもクマは男の子だったようだ。

"Winnie-the-Pooh" by A,A,Milne,1926

ディズニーとは違うプリンセス

プリンセスと聞くと、若く美しいお姫さまを思い浮かべるが、
この本の登場人物の一人「Princess Doragomiroff」は、かなりの高齢で、おまけに全く美しくない。ロシア人の大金持ちで、高価な衣装を見につけ、姿勢がよく、はっきりして丁寧だが支配することに慣れた話し方をする。近寄りがたいが、独特な魅力を持つ人物だ。

"Murder on the Orient Express" by Agatha Christie 1934

石のスープの作り方

疲れて腹ぺこの三人の兵士が、ある村にやってきた。
村人たちは、見知らぬ兵士を恐れて食べ物を隠し、家にも入れようとしなかった。
三人の兵士は相談し、村人たちに
「何も無いなら、一緒に石のスープを作ろう」と提案した。
興味津々の村人たちは、三人の兵士の言うとおり、広場に大きな鍋を持ってきて水を入れ、焚き火に載せ、丸く滑らかな石を三つ入れた。

すると、三人の兵士が言い出した。
「塩と胡椒があれば、」
「人参があれば、」
「キャベツがあれば、もっと美味しくなるのに」
それくらいならと、村人が隠してあった食材を次々に持ってきた。
さらに、
「牛肉とジャガイモがあれば、お金持ちのスープになる」
「大麦少しと、ミルクが一杯あれば、王様のスープだ」
という注文も叶えられ、見事に美味しそうなスープが出来上がった。

村人たちは広場に大きな机を据え、パンと焼肉とリンゴ酒も持ち込んだ。そして三人の兵士を囲んで、飲んだり踊ったりの楽しいパーティが始まった。

こうして、三人の兵士は、美味しい食事と暖かい寝床を手にいれた。かたや、
「何も無くても、石のスープの作り方を教わった」と村人たちも大喜びなので、めでたしめでたし。

何はともあれ、大鍋で煮込まれた具沢山のスープが美味しそうな、冬にぴったりの絵本だ。

"Stone Soup" by Marcia Brown,1947

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