記事一覧

文楽

国立文楽劇場で「心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)」を見た。こじんまりした一階だけの客席で、語りの太夫(たゆう)と伴奏の三味線一人ずつで舞台が進行するのにちょうどいい広さ。字幕のおかげで初心者にもよく分かった。台本は、大阪のことばで書かれていて、今日の「網島」始め大阪の地名がどっさり出てくる。ことば遊びも随所にあって、舞台の規模などシェークスピア劇を連想させるところもある。最も、内容は「ロミオとジュリエット」の若さからくる一途な情熱とはまったく違う。まず、男が感情豊かでやたらに泣き、女がしっかりしている。二人は、周りに気を使い、自分たちの名誉のため、また筋を通そうとした挙句に心中せざるをえなくなる。これを「義理」と表現するらしい。四時間にわたる長丁場だったが、クライマックスでは人形がひとりでに動いているように見えた。