funini.com こどもの本 2013

ドビーの先祖

ディックは、イングランド中ほどのコッツウォルズ地方にある屋敷に何百年もの間、住んできた。ふつうの人には見えない存在だが、ある少女には、「ぼろを着た小さな人」に見える。

時は17世紀後半、清教徒革命後、没落した貴族が屋敷を去り、かわりに新教徒の商人一家が住むことになった。新教徒は、古いしきたりに従わず、クリスマスも楽しく祝う事はしない。

屋敷を愛し、古いしきたりを守り、ディックの存在を信じる心優しい人たちを、彼はひそかに助け、また屋敷に隠された宝を守り、邪悪な魔女に立ち向かう。

ディックのおかげで、屋敷の女主人として幸せになった娘は、お礼に新しいシャツを贈る。それを着ると自由の身になれるのだ。

現代によみがえったディックの遠い末裔が、「ハリー・ポッター」シリーズに登場するハウスエルフのドビーだろう。

"Hobberdy Dick" by Katherine Briggs(1955),

Faber and Faber(2009)

2013年12月27日(金)

'House of Many Ways'

家事は大の苦手で、ひたすら本を読むのが好きな女の子が、実は魔法の才能に恵まれていてトントン拍子に話が進むという、本好きの怠け者には夢のような楽しいお話。ただし、学校推薦図書には選ばれそうもない。

'Haul's Moving Castle'の続編なので、「動く城」の他にハウルやソフィーや火の悪魔も登場する。主な舞台は「動く城」ではなく「時間空間いろいろな場所に行ける家」である。

主人公の名前、Charmainの発音だが、チャーミング(Charming)と間違えられて喜んでいたので「チャーメイン」か?

'House of Many Ways' by Diana Wynne Jones

2013年11月02日(土)

ライオンと一角獣

「貴婦人と一角獣」を見た。西暦1500年ごろに制作されたフランスのクリュニー美術館の6面連作タピスリーである。一面、千花模様の数十種の植物や、動物や鳥で埋め尽くされていて少々息苦しいが、近くで見ると、貴婦人の髪形やドレスもそれぞれ違っていて見飽きない。

日本で言えば和紙の襖や屏風に当たるような気がするが、こちらは、重厚な織物なので、壁掛けとして防寒の役目もしたようだ。

貴婦人の両脇に控えるライオンと一角獣を見ていたら、「鏡の国のアリス」に登場する伝承童謡のライオンと一角獣がプラムケーキを挟んでにらみ合う場面を思い出した。

2013年10月03日(木)

"Howl's Moving Castle"

英国ウェールズ出身の青年、ハウエル・ジェンキンスは、ラグビーが得意で、大学で「呪文と魔術」という博士論文を書くほど優秀だったが、定職につかなかったので、たまに姉夫婦の家に行くと「働きもしないで・・・」と叱られていた。ところが実は、彼には特殊な才能があり、別世界に行って「魔法使いハウル」になって「動く城」に住んでいたのだ。そして、たまに訪れるウェールズで甥に創ってやったゲームが「動く城」だった。

この物語は、イケメンだが弟気質のハウルが、別世界で流れ星を助けるため困った事態に陥ったところに、しっかり者の長女ソフィーが巻き込まれるところから始まる。「オズの魔法使い」を連想させる、この作者らしい軽くて楽しい話だ。

"Howl's Moving Castle" by Diana Winne Jones

2013年09月13日(金)

コーディアル

風に乗ってやってきた不思議な乳母メアリー・ポピンズが、最初の晩、子どもたちに飲ませた「寝る前に一さじ」と書かれた壜は、苦い薬ではなく子どもたちそれぞれの大好物の味がした。その中で、ジェインのは「ライムジュース・コーディアル」(Lime-juice cordial)だった。

その、ずっと気になっていたコーディアルなるものを見つけたので買ってみた。要するに果物などの濃縮ジュースらしい。有名なのは、エルダーフラワーやジンジャーで、その起原はローマ帝国時代にさかのぼるという。エルダーフラワーのは、炭酸で割ったら爽やかでちょっと癖になる美味しさだ。

"Mary Poppins " by P.L/Travers

2013年09月01日(日)

'Time of Wonder'

アメリカの長い夏休みに、姉妹と両親が東海岸の小島にやってくる。そこで、浜辺で遊んだり泳いだり船に乗ったり、春から夏の季節をたっぷり楽しむ。「すばらしい驚き」に満ちた日々。やがて、季節は進み嵐がやってきて夏が終わると、家族は町に引きあげる。潮の満ち引きの時間を頼りに暮らしていたのを、スクールバスの時間に合わせる暮らしに戻るのだ。

暑い夏の昼下がり、この本の海や空や木の絵を眺めているだけで少し爽やかな気分になる。

'Time of Wonder' by Robert McCloskey

2013年08月07日(水)

時間泥棒

昔の手紙は、書くのも切手を貼って投函するのも手間がかかった。いまやメールと携帯ですぐに連絡できるし、交通手段も発達している。ところが暇な時間はできず、ますます慌ただしく忙しくなる一方だ。「モモ」の時間泥棒が暗躍しているに違いない。

2013年06月03日(月)

種イモ

幌馬車で旅を続けたローラの家族は、大草原に落ち着き、家を建てた。ところが、春先に畑を耕し、やっと種イモを半分植え付けしたときに、政府の命令で立ち退かなくてはならなくなった。そこはインディアン居留地だったのだ。

引っ越しの日、残しておいた種イモを、もう植え付けはできないので食べることにした。久しぶりに美味しいポテト料理を食べながら、とうさんが言った。

「大きな損をするときは必ずちょっぴり得するものさ」

'There's no great loss without some small gain.'

'Little House on the Prairie' by Laura Ingalls Wilder

2013年05月25日(土)

ペリ太郎

新しい携帯が来た。慣れない操作に悪戦苦闘して電源を切ると、黒い画面一面に指紋が付いていた。

クリスティの短編で、ミス・マープルが、完璧なメイドに化けた泥棒の指紋を採るためにわざと持たせた手鏡を思い出した。

2013年05月05日

「barmaid」になる「mermaid」

舞台はイングランド南東部サセックスのヒナギク野原。

旅人マーティン・ピピンが、6人の少女にお話をする。

フェアリーになりたい少年と人間になりたいフェアリーの話、

フェアリーも認めるなわとび名手の話、

食べても食べても太らない子豚の話、

掃除をさせられる海賊の話、

綺麗好きな7人姉妹に育てられた小さな煙突掃除夫の話、

居酒屋に勤める人魚の話など、登場人物もさまざま。

"Martin Pippin in the Daisy-Field" by Eleanor Farjeon

2013年04月03日(水)

糸の玉

「からだだけで、しっぽがない。でも、ネコにあげると

しっぽだけで、からだがなくなるもの、なあに?」

というなぞなぞがあった。

(I'm all Body and no Tail, But give me to your Cat,

I'm no Body and all Tail.)

答えは「糸の玉」

(a Ball of String)。

ネコがじゃれると糸玉がほどけて糸になってしまう。なるほど。

"Martin Pippin in the Daisy-Field" (Fourth Interlude)

by Eleanor Farjeon

2013年03月05日(火)

ホビット

「ホビット」を最初に読んだのは瀬田貞二訳だった。ガンダルフの「やんぬるかな」、つらぬき丸、忍びの者、ゴクリの「いとしいしと」など忘れられない。

ただし、ビルボとゴクリのなぞなぞ対決や、詩の部分は訳せないので原書の方が面白い。

'The Hobbit' by J.R.R.Tolkien

2013年02月06日(水)

ハビトロット

「むかしむかし、やさしく美しいけれど、怠け者の娘がいました。結婚式も近いというのに楽しく踊ってばかりいたので、嫁入り支度にする糸紡ぎがぜんぜんできていません。娘が森で泣いていると、小さなおばあさんがあらわれました。おばあさんは、糸車を素晴らしい速さでまわしていて、娘の代わりに糸紡ぎをしてくれるというのです。おばあさんが紡いだ糸は見事なできばえで、娘は糸紡ぎの名手として有名になってしまいます。

やがて、結婚の日になりました。そのお祝いの席に、醜いおばあさんがやってきたのです。その唇は垂れてねじれ、親指は広がり、足は扁平で、背中は曲がっています。どうしてそんな姿になってしまったのかと聞かれたおばあさんは、それが、長年の糸紡ぎのせいだと答えます。それを聞いた花婿は、花嫁には一生糸紡ぎはさせないと誓いました。めでたしめでたし」

その話を聞いていた動物たちは、「何の教訓もないけど、すてきな話」と言う。同感。

グリム童話にもある話だが、これはポター作。

Habbitrotとして知られるおばあさんが糸を紡ぐ音は、「trot,trot,habbitrot」と聞こえる。「trot」は馬が駆ける音でもある。目にもとまらぬ速さで回る糸車が思い浮かぶ。

"The Fairy Caravan" by Beatrix Potter

2013年01月06日(日)