三月大歌舞伎、昼の部、千穐楽
一、明君行状記(めいくんぎょうじょうき)
真山青果作
備前国岡山の青地善左衛門(坂東亀三郎)は禁猟地内と知らず鳥を撃ち落とし、法の通りに死罪にしろと言い張る。名君と誉れ高い藩主、池田光政(中村梅玉)が、彼を納得させる名裁きをする。
二、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
渡海屋(とかいや)、大物(だいもつ)浦
兄頼朝の追手から逃れるため九州へ向かう義経(梅玉)一行は、大物浦の船問屋、渡海屋で出船を待つ。
渡海屋の主人銀平(仁左衛門)は、実は壇ノ浦の合戦で死んだはずの平知盛で、女房は典侍の局(すけのつぼね)、娘は安徳天皇。
密かに復讐の機会を狙っていた知盛は船出した義経一行を襲うが、返り討ちにあう。典侍の局(中村時蔵)は、義経に安徳帝(市川右近)を托して自害し、知盛も碇と共に海中へ身を投げ壮絶な最期を遂げる。
義経に信用させるため、鎌倉方と偽り銀平にあしらわれる相模五郎(坂東巳之助)の捨て台詞「魚づくし」(・・・いなだぶりだとあなごって、よくいたいめざしにあわびだな・・・)が面白い。
能の「船弁慶」は、知盛が怨霊となって現れるが、こちらは現実的な設定だった。
三、神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)
江戸の風俗舞踊、どんつく
参詣人で賑わう亀戸天神の境内。江戸っ子の太神楽の親方鶴太夫(松緑)と田舎者の荷物持ちのどんつく(巳之助)。曲芸を見せる彼らの周囲に、若旦那(海老蔵)や大工(菊五郎)など大勢の人が集まり、賑やかに舞う。
十世坂東三津五郎が得意とした舞踊を、三回忌追善狂言として息子の巳之助が上演。