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第64回正倉院展

奈良の正倉院展に行った。

まず、青の瑠璃杯(るりのつき)が綺麗だった。

華やかな螺鈿紫檀琵琶(らでんしたんのびわ)や、淡い色合いの瑠璃(glass)や水晶で作られた双六(すごろく)玉や碁石、側面や脚にも繊細な装飾が施された双六盤や、当時の本である巻物を載せた書見台など、どれも様々な技法を駆使し精魂込めて作られていた。

盤を収める箱にも細かい編みこみ模様がしてあるのは、包装にこだわる日本人の原点だと思った。

瑠璃の3cm程の物差しは、黄と緑が鮮やかだった。10cm程の小刀は、柄にも鞘にもこれまた繊細な草花などが描かれ、小さな真珠で飾られていた。どちらも、紐をつけて腰にぶら下げて飾りにしたらしい。携帯ストラップに通じるものがある。

紙はとても貴重だった。丹(red lead)を包んだ紙は再利用されていた。写経所での作業報告書は、写経紙の切れ端を何枚も繋いであり、報告者の名前の後に「紙を何枚受け取り、何枚使用し、どれだけ仕上げた」などが書かれていた。隣に、その中の一人が仕上げた写経が並んでいたが、さすがに報告書の字の方は気楽な雰囲気がした。ただし数字もすべて難しい漢字なので大変だ。

展示品の美しさや技術の高さに見とれると同時に、1200年以上も昔の人たちが身近に感じられる一時だった。