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春の芦屋

 神戸市の東、芦屋市の中ほどを流れる芦屋川に沿った山側の高台に、旧山邑(やまむら)家別邸がある。これは、帝国ホテルなどの設計で名高いアメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの設計で、大正末期の1924年に建てられた鉄筋コンクリートの建物で、その後、大規模に修復されたものだ。六甲の山並みを背に、緑の木々に囲まれ、自然の一部のように見える建物は、彫刻された大谷石、マホガニーの採光窓など、細工の一つ一つが凝っている。春の日がさすベランダからは、美しい桜並木が続く芦屋川がずっと見下ろせた。
 和室には、明治末期に、酒造家の山邑家当主が長女の誕生を祝って京都の人形店に特別に作らせた雛人形が飾られていた。「雛人形」「花嫁人形」「花観(はなみ)人形」の三式に分かれているが、その中でも当時最高の頭(かしら)師の作品の数々は、一体でも当時の家一軒と同じくらいの価値だったそうだ。雛人形は、頭(かしら)師ほか、髪付け師、手足師、織り師、小道具師などそれぞれ専門の職人の技による総合芸術で、最後、まとめて着付ける着付け師が「人形師」といわれたそうだ。現在では、その技術の復元も無理だという人形たちは、100年以上経つのに生き生きとうつくしかった。
 ビゴのパンがおみやげ。明日の朝は、クロワッサンと、カフェオレ!