能の楽器を演奏する人たちを「囃子方(はやしかた)」という。
「はやす」とは「映えるようにする、ひきたてる」という意味で、「囃子方」は、単なる伴奏でなく舞や謡を盛り上げる役目を持つ。笛と、小鼓(つづみ)、大鼓、太鼓の三つの打楽器が基本で、それぞれの楽器に流派があり世襲で受け継がれている。
向かって右端が「能管(のうかん)」という竹の笛。わざと揺らぎのある不安定な音で登場人物の感情をあらわす。
右から二番目が小鼓。左手で右肩の上に構えて、右手で打つ。湿り気を与え、響きのあるトンという音がする。
その隣が、小鼓とペアになる大鼓。こちらは左腰の脇に構えて、右手で打つ。演奏前に炭火で乾かすため、カーンという鋭い音がする。
左端が太鼓。面の真ん中を二本のバチで打ち、コンコンという軽い音がする。
互いに息を合わせるためにかける掛け声が特徴的で、音程も不定で、間(ま)が大事という、すべて音符で埋められた西洋音楽とは正反対の世界だ。
扇を持つ謡が入れば五人囃子になる。気が早いが来年のお雛様を飾るときには並べ方に気をつけよう。