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関数とグラフ

多変数関数は大変!

 高校の数学では、関数を理解する時に「グラフ」がよく用いられます。 これはとても便利で、抽象的な関数に具体的な「形」を与えてくれます。 受験問題には「グラフを使えば鮮やかに解ける」というものが多くありますが、 これはグラフによって様々な数学的な情報が直感的な形で見えるようになるためです。 また、グラフは様々な数学的な概念を理解するのにも役立ちます。 「x軸との交点」が解になり、「接線」「漸近線」「包絡線」なども 説明するよりグラフで見た方がずっと分かりやすいと思います。 微分はグラフの「傾き」、積分はグラフの「面積」として考えるのは 分かりやすい上に、とても理にかなっています。
 実際、xを決めればyが決まるという「一変数関数」では、 ある関数y=f(x)とx-y平面上のグラフを一対一で考えることが出来ました。 しかし、今後扱うような「多変数関数」では、関数を直接グラフに表すのは 大変です。z=f(x,y)という二変数関数を描くには(x,y,z)の三次元空間が、 v=f(x,y,z)という三変数関数を描くには(x,y,z,v)の四次元空間が必要になりますが、 三次元でさえ描くのが大変、四次元ではお手上げです。 つまり、多変数関数を考えるときには、もっと一般的、抽象的に定義し直す必要があります。  というわけで、ここでは「関数」というものを一度グラフから切り離して、 色々な見方でとらえてみます。

写像としてとらえる

1変数関数は、見方を変えると「x」という入力に対して「y」を出力する操作(写像) だと見ることが出来ます。 図で描くとこんな感じ。

多変数関数は入力が複数になったものなので、下のように書けます。 同じような見方をすると、例えば二変数関数なら「(x,y)」というベクトルの入力に対し、 「z」という値が出力されるものと考えられます。

このイメージは多分「f(x)」という書き方に一番近いもので、 「入力(独立変数)」と「出力(従属変数)」がはっきりしている時は便利。

「相関表」としてとらえる

 逆関数とか陰関数とかを考える時は「入力」と「出力」という考えを もっとあいまいにした方が考えやすいです。 この場合、関数は相関表のようなものだと考えるといいかな。 これは、教科書の裏とかに載ってるSinとかlogの表みたいなもの。 ただし、これらの表はごく限られたxについての値しか載っていませんが、 これを「すべて」書き上げたものを考えてみて下さい。(x=-∞からx=+∞まで、全ての実数の範囲で) 一変数関数なら、xの値とyの値が(x,y)という形でひたすら並んでいると考えて下さい。
y=-2xなら、
...(0,0).....(0.001 , -0.002)......(0.002 , -0.004).....(1 , -2).....(2 , -4).......(1000 , -2000)..........
という感じ。要はグラフ上の座標をひたすら書き上げただけです。 でも、重要なのは並べる順番は任意である、ということ。
これをx基準に並べればxの関数になるし、 y基準に「並べ替えれ」ばyの関数と見ることも出来ます。
一対一の写像でない時は、一つのyに対し二つ以上のxが対応してしまいます。 例えばy=x2なら
...(-2,4).....(-1 , 1)......(0 , 0).....(1 , 1).......(2 , 4)..........
だから、このような時は範囲を絞ってから並び替える必要があります。

 多変数に拡張する時も同様です。z=x2+y2なら
...(-10 , -10 , 200)...(-9 , -10 , 181)...(-1 , -10 , 101)...(0 , -10 , 100)...(10 , -10 , 200)......
...(-10 , -9 , 181)......(-9 , -9 , 162)......(-1 , -9 , 82)......(0 , -9 , 81).......(10 , -9 , 181)......
...(-10 , 0 , 100)......(-9 , 0 , 81)......(-1 , 0 , 1)......(0 , 0 , 0).......(10 , 0 , 100)......
.................................................................................................................
書くと大変だけど、イメージ自体はできるはず^^
この時、相関表でz=1の物だけを取り出すと、(x,y)だけの相関表が得られます。 これをxの関数として見るのが「陰関数」です。

「ベクトル」としてとらえる

 ラグランジュ形式で出てくる「変分法」では、 関数をベクトル(!?)として見ると都合が良いです。 一変数関数は、x=-∞からx=+∞まで何らかのyの値が定義されている わけですが、これは無限次元のベクトルのようなものと 見ることが出来ます。 つまり、ある関数f(x)の"0成分"はf(0)、"1成分"はf(1)といった感じ。 「変分」として考えるごく小さな関数とは、
(.......0 , 0 , 0 , 0.1 , 0 , 0.01, 0 , 0 , ...........)
といった感じの絶対値のごくごく小さいベクトルと考えればよいです。 多変数関数ならこれは行列みたいな感じになりますが、考え方は同じ。 こう見ると、任意に関数を動かすとかいう辺りが分かりやすくなる・・・かな?
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