「マザルブルの書」Ⅱ

<ガンダルフは黙って、数ページを脇へ置いた。そして「同じ種類のものが数ページあ る。かなり急いで書かれており、ひどく傷んでいる。」と言った。「だが、この暗さで は ほとんど読むことができぬ。それから、多くのページが失われているに違いない。なぜなら、5と数字が打たれて始まっているが、これは居留地に来た五年目を意味すると思われるからだ。待てよ! いや、あまりに切り取られ汚れていて、読むことができぬ。日光の下なら少しは読めるかも知れぬが。待て! 何か分かりそうだ。大きく力強いエルフ文字の筆跡だ。」

「それはオリの筆跡だと思います」とギムリが、魔法使いの腕越しに見ながら言った。「彼は、素早く上手に書くことができましたし、それによくエルフ文字を使いましたから。」

「残念ながら、その美しい筆跡で悪い知らせを書いているようだ。」とガンダルフが言った。

<     (「The Fellowship of the Ring」第二巻第五章「カザドデュムの橋」)

このページは、後代の、もしくはWestronの慣習にのっとり、北方の変形で、共通西方語へエルフの記号を適用したもので書かれている。内容は「The Lord of the Rings」追補編 Eに与えられた情報を元に翻訳することができる。しかし、以下の事項を特記しておこう。

母音は、tehtar(母音につけた記号)ではなく、a,e,o,uの別々の文字であらわされているが、それらは各々tengwar文字の24,35,23,22を示している。(「The Lord of the Rings」追補編 Eの表を参照のこと)また、iは、付点のないi、もしくは上に細い一画をつけてあらわされている。yは、9行めの「多く」の所でjが使われ、wは、tengwarの22と25の両方が使われている。しかし二重母音ou,owと(3行目の「悲しみ」の所と13行目の「不安」の所)、ew(9行目の「殺害した」の所)は、最初の文字の上に曲線をつけ、またayは(4行目の「日」)、aの文字の上の二つの付点であらわされている。

eは(6行目の「一人で」の所と、10行目の「銀の鉱脈」の所)、しばしばその前の文字の下の付点で示される。

子音の上の横線は、6行目の「行った」の所のように、その前が鼻音になることを示すのに使われる。また二重子音は、13行目の「塞いだ」の所のように、二番目の文字の下線であらわすらしい。lを重ねる場合は、tengwar文字の28が使われている。

ページの一番下のルーン文字は、数字の5である。

1 r・・・・・arz(おそらくars、幾年かの末に?years)

2 以来・・・・・備わって

3 悲しみ・・・・(昨)日

4 十一月の十日に

5 モリアの主バーリン倒れる。

6 ディムリル谷で。そこへ彼は一人で行った。

7 ミラーメア(純粋な鏡)を見る為に。するとオークが

8 岩の後ろから彼を射た。我々は

9 そのオークを殺害したが、更に多くが来・・・

10 銀の鉱脈を登り東から・・・

11 我々はバーリンのか(らだ)を救い出した・・・

12 ・・・激しい戦い・・・

13 我々は門を塞いだが不安だ

14 ・・・持ちこたえることができる。もし・・・

15 脱出口がなければ恐ろしい運命が来るであろう・・・

16 被るも、私は保ってみせる


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