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「時の旅人」 アリソン・アトリー (前編)


 今年の大河ドラマは新選組。そう、私が大好きな新撰組。小学六年生の夏休みの自由研究にまでしてしまった新撰組。その時は知名度も低く、私がいくら熱く語っても宇宙人を見るような目でしか見られなかったのに、今やTVも本屋も新撰組だらけ。学校では一学期に日本史の授業で、先生に許可を得て新撰組講義をしたんでちょっと満足ですけど、世の風潮には正直「ハッ」ってなもんです。ま、もう十七なんだから、ちょっとやそっとのにわかファンの知ったかぶりに一々腹立てるなんて大人気ない真似はしませんけどね。成長したんです。昔は「新撰組は好き、桂(小五郎)さんや(高杉)晋作さんはカッコいいから好き、薩摩(西郷隆盛とか大久保利通とか)はダメ、(坂本)竜馬もダメ、勝海舟はもっとダメ(局長の助命嘆願を無視したから)」と、せまーい物の見方しかできなかったんですが、この頃は竜馬もかっこいいなー、と思ってます。ま、大河について文句言うとそれだけで終わっちゃうんで。あの武田観柳斎は某マンガの影響モロ受けだろ(独り言)。
 そんなわけで、もしタイムスリップできるなら、絶対幕末の京都に行きたいです。旅籠の娘にでもなって長州のかっちょいい志士たちと顔馴染みになるんだけど、裏では新撰組監察方に情報を流すのです(実際、髪結いの娘でそういうことをしてた人がいたらしいです)。妄想しすぎ?でも、歴史好きには夢ですよね、タイムスリップ。今回から次回にかけて紹介するのは、歴史好きでも何でもない女の子が、古い屋敷、それに血筋の力を借りて<時>の壁をこえてしまう、ロマンチックな、でもちょっぴりせつない素敵なお話です。アリソン・アトリー作、松野正子訳「時の旅人」。
 二十世紀前半のロンドンに住む少女、ペネロピーは母方の大叔母、ティッシーおばさんとバーナバスおじさんの住むダービシャーの古い荘園屋敷、サッカーズを訪れます。そこで彼女はふとした拍子に十六世紀の“時”へ行くドアを開け、当時のサッカーズの人々に出会い、親しくなるのですが、若き領主、アンソニー・バビントンは時の女王、エリザベス(一世)に歯向かい、幽閉されているスコットランドのメアリー女王を救い出そうとします・・・。えー、この本は読む前にその頃のイギリスの歴史を頭に入れておくことをオススメします。と言ってもわざわざ調べるのはめんどくさいですよね。よし、ここで今回おさらいしちゃいましょう。題して「マイの分かりやすい世界史講座」。
 十六世紀前半、イングランドを治めていたのはヘンリー八世でした。彼は自分が自由に離婚できるようにするため、当時主流だったカトリックからの独立を宣言し、英国国教会を設立しました。それからの王位争いは、宗教争いが密接に絡んできます。エドワード六世、ジェーン・グレイ(彼女についてはカーリン・ブラッドフォード作「九日間の女王さま」という本を読んでください。子どもの本ですけど泣けます)、メアリー一世(別名ブラッディ・メアリー、つまり血のメアリー)と来てエリザベス一世が即位したのは一五五八年。エドワード、メアリー、エリザベスは異母姉弟。エリザベスの母は身分が低く、離婚ではなく処刑されたので、エリザベスには王位継承にふさわしくないという声もありました。そこでかつぎ出されたのがスコットランドのメアリー女王、メアリー・スチュアートです(メアリー一世とは別人)。彼女は、スコットランドのステュワート王家に嫁いだヘンリー八世の姉(妹?)の孫にあたり、フランス国王、フランソワ二世の妻となり、イングランドの正式な王位継承者を名乗りましたが、子どもができなかっため、夫の死後、スコットランドへ戻りました。彼女は数人の貴族と恋愛した後、ボスウェル伯と結婚します。この結婚には宗派を問わず多くの人が反対し(彼女とボスウェル伯には、彼女の元恋人、ダーンリー卿殺害の容疑がかけられていた)、反ボスウェル派の軍に王位をおわれたメアリーは、イングランドのエリザベスの元へ逃げ込みました。エリザベスはメアリーを軟禁状態にし、英国各地を転々とさせましたが、メアリーは度々イングランド王位継承者であることを主張し、エリザベス廃位の陰謀に加担しました。一五五八年のバビントン事件(「時の旅人」の、アンソニー・バビントンがエリザベス暗殺を企てた事件)で有罪の証拠があがり、一五六九年、処刑されました。
 およよ。全然分かりやすくないかも。世界史の教科書みたいだよ。エリザベス即位についてのゴタゴタはケイト・ブランシェット主演の映画「エリザベス」がオススメ。あれ好き。暗いけど。と、今月これを読んで予習して、「時の旅人」を読んでおくと、次回の「感想編」が楽しんでいただけると思います。BGMは♪Green Sleevesでお願いします。では続きは次回!
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