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「ゲド戦記」 アーシュラ・ル・グウィン


 夏休み、昨夏に引き続き二週間オーストラリアに行って参りました☆いやあ楽しかった楽しかった。ホストシスターの八歳の妹になつかれて毎日二人で走り回ったり、弟のやってるBMX(自転車競技)の練習を見に行ったり、ノーヘルでバイクの後ろに乗っけてもらったり、州総督に会いに行ったり、慣れないスカートのせいで膝が寒かったり・・・いい思い出です。あっちでは勿論、日本国内でもいい出会いがありました。一緒に行った、全国から来てる九人の高校生と、ちかっぱ(注:ちかっぱ→「力いっぱい」の略。「めっちゃ」「ばり」などと同義語。主に博多地方で使用されるらしい)仲良くなりました。まあ全国と言っても埼玉、東京、神奈川、広島、福岡、大分、長崎、と随分偏ってはいるんですが、方言も違うんでいろいろおもしろかったです。数年後にまた同じメンバーでオーストラリアへ行こうと、固く誓った十六(いや、十七?)の夏でした。
 そうして夢のような二週間から帰った私を待ち受けていたのが学校の宿題。そう、原稿用紙五枚の読書感想文。三日三晩悩んだ挙句、締め切り翌日に何とかでっち上げました。折角だからということで、今回の本はそれです。アーシュラ・K・ル=グウィン著 「ゲド戦記」。一巻から順に「影との戦い」「壊れた腕輪」「さいはての島へ」「帰還」「アースシーの風」となってます。大好きなシリーズなんですが、ものすごく深い話なので避けてました。「影との戦い」の「影」は、読んでもらった当初“マイの怖いキャラクター・ランキング”に、指輪物語のナズグルと同率1位に堂々のランクインを果たしました。そんな思いの詰まった本ですが、勇気を出して紹介します。まず、ゲド戦記というからに、主人公はゲド。舞台はアースシーという世界。魔法を使う能力を持った少年ゲドが、ローク島の学院で魔法を学び、自らの呼び出した影と戦い、竜王になり、平和の証であるエレス・アクベの腕輪を一つにし、大賢人となり、なすべきことをなし終え、力を失うところまでが、前三巻。残り二巻は私の中ではゲド戦記に分類されません。むしろゲドの養女となるテハヌーの話。
 で、「アースシーの風」は、つい最近和訳が出たばかりの本です。著者がいつからこの話を考えていたのかは分からないんですが、これまでのアースシー観を、見事にひっくり返してくれます。特に死の世界についての考えは、三巻でゲドとレバンネンがあんなに苦労して壁を閉じたのに・・・と、正直腹さえ立ちました。でもきっと、それがきっかけで、破られたものが全きものとなったんだと思います。あと、女性の登場人物の多さ。テナー、テハヌー、セセラク、アイリアン。これまで、私の中では「ゲド戦記」=「女っ気のない話」だったんですが、これもびっくり。セセラクは、隣国カルガドから政略結婚のために送られて来た娘です。彼女が初めて外国語を覚えて、四苦八苦して話す様子は他人事とは思えません。多分オーストラリアでの私もそんな感じだったんでしょう。彼女には是非レバンネンと幸せになって欲しいものです。あ、もう一組、私の一押しカップル(笑)が、アイリアンとアズバー。和訳では「アズバーが「もどってくるつもりはあるのか」と聞くと、アイリアンが『呼ばれれば、もどってくる』と答えた」となってるんですが、これは違うんです。原書は“If he called her”なんです。このheを略しちゃ駄目!正しくは「彼(アズバー)が呼べば」なんです!と、主張しておきます。彼らについては詳しい短編あって、私は既に原書で読んだんですが、近々和訳されますので、「アースシーの風」と合わせて読んでください。多分邦題は「トンボ」です。
 まだまだ語り足りないですが、字数の関係でこの辺で。
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