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「くまのパディントン」 マイケル・ボンド


 今回紹介する本は、ペルーからイギリスまで密航してきたクマの話です。と書くと何だか深刻な推理小説の様ですが、ご心配なく。立派な児童文学です。マイケル・ボンド著「くまのパディントン」。割と有名だと思うんですが、どうなんでしょう。どうも児童文学において私の考える「一般常識」はあまり常識じゃないらしいので(「プーさんってディズニーで作られたキャラクターじゃないの?」と言われたときには驚きの余りしばらく口がきけなかった。もうちょっと視野を広く持たなきゃ、と反省)。ではあらすじ。
 「暗黒の地」ペルーで、ルーシーおばさんと暮らしていた子グマは、ルーシーおばさんが、「リマの老グマホーム」に入るので、マーマレードの瓶一つを食料にして、イギリスまで密航して来ます。パディントン駅で出会ったブラウンさん夫妻に「パディントン」と名づけられ、ブラウンさん一家と暮らすことになります。そうして始まるパディントンのびっくりどっきり奮闘記(何じゃそりゃ)。お風呂に入るところから始まって、地下鉄に乗る、百貨店へ買い物に行く、絵を描く、海水浴に行く・・・それら全てを事件にしてしまうパディントン。かるーく読めて、後味すっきりな一冊です。いや、本当はシリーズで六冊くらいあったはず。よろしければ続けてどうぞ。
 この本の何が好きかってそりゃパディントンです。子グマだけど、礼儀作法はしっかりしていて、確固たる自分というものがあるのに、やることなすこと失敗(?)しちゃっておもしろくてかわいい・・・何かしら憎めないんです。小さい頃に印象が強かったのは、絵の話(自分のやっちゃった失敗を修復しようとしてあせるところが他人事とは思えない)とか、百貨店での話(エレベーターに乗ったときの描写が真に迫ってる!)だったんですけど、この頃は、自分にその機会が増えたからか、芝居を観に行く話がお気に入り。こんなかわいいプロンプター(舞台で、役者がセリフを忘れた時に、そっと、正しいセリフを教えてあげる人のこと)欲しい!でも休憩時間に楽屋に談判されに来たら困るなー。だけど談判に来させるほどの演技ができたら役者冥利に尽きますよね・・・あ、話がずれました。あと、毛糸のポンポンつき帽子!挨拶のときに帽子を脱ぐかわりにポンポンをちょっとひっぱる仕草がかわいいなー、っと思ってました。他にも、「天真爛漫顔」とか、「消えてなくなる手品」とか容易に想像できて、にやっと笑える場面が満載です。登場人物も、ブラウンさん一家を始め、素敵な人ばかり(カリー氏他二、三名除く)です。バードさんのケーキが食べたい・・・。グルーバーさんとお茶したい・・・。すみません、食べることばっかりで。だって、パディントンがそれだけよく食べてるんですよう。この本を読んでいて、クリームのたっぷりついた菓子パンが食べたくなってきたり、大きな瓶のマーマレードが魅力的に思えてきたりするのは私だけではないはず・・・!
 そんなこんなで、この本を読み終えるころにはすっかりクマの気分になっているはずです。では、本と同じく、ブラウン奥さんのこの決め台詞で終わらせていただきます。「ねえ、ヘンリー。うちの中にクマがいるっていいものねえ。」
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