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「冒険者たち」 斉藤惇夫


今回は笑いあり、涙ありの冒険小説を紹介します。斎藤惇夫作、薮内正幸画、のガンバ三部作「グリックの冒険」「冒険者たち」「ガンバとカワウソの冒険」。主人公はガンバ。といっても「グリックの冒険」ではグリックが主役。残りの二つは、ガンバとその仲間の物語です。今回は後者に絞っていきたいと思います。ではあらすじへどうぞ。
 ガンバはずっと町暮らし。ある日友達のマンプクに、港で開かれている、年に一回の船乗り達の集まりに行こうと誘われます。何気なしについていったガンバでしたが、その集まりに、夢見が島から助けを求めにきた忠太の仲間を救うため、「十五にんもの仲間を強引に連れ込ん」で、島へ渡ります。知恵と力の限りを尽くし、獰猛な敵と戦い・・・これが、「冒険者たち」。「ガンバとカワウソの冒険」では、すっかり船乗りとなったガンバ。仲間達と、シジン(仲間の名前)の恋人を探しに四の島へ。ところがそこで絶滅したはずのカワウソに出会い、彼らを「豊かな流れ」まで送りとどけるため、また長い旅に出ます。うん、そんな感じ。何より読んでもらえればわかると思います。
 感想?うーん、何から書いたら良いのやら。まず、えーと、日本文学にしては歌が多いです。特に「冒険の歌」は名作です。さすが旅を住処とする奴らの歌です。さすが瀬田貞二さんの編集者をしていた人です(←作者がね)。音読してみると良さが分かります。あと、仲間たちの名前がおもしろい。ガンバは、「ガンバリヤ」からとった名前。順番にあげていくと、ヨイショ、ガクシャ、バレット、バス、テノール、ジャンプ、アナホリ、カリック、ボーボ、オイボレ・・・etc。なんて素敵なネーミングセンス。彼らの特徴が一発で分かります。あと、それぞれのキャラクターに合った一人称、喋り方で、読んでて楽しいです。因みに私が好きなイカサマは、名前をつける名人です。新入りの名前は彼が決めます。イカサマがなぜイカサマというかというと(うーん、うっとうしい文章!)、物事を何でもサイコロで決めてしまうから。そして見かけもそこはかとなくうさんくさい。三作目ではサイコロを手に入れた次第を歌ってくれます。うーん、カッコいい。でも物語はハッピーエンドなのが好き、という意外な一面もあったりして。うーん、カワイイ。あと、イダテンも好き。ちょいとナルシスト(?)入ってるけどね。「ああ、だから足が早すぎるってことはこまるんだよ。」三作目で登場するキマグレは、オイシイ役どころ。舞台にするならやりたい役ナンバーワンでしょうね。気まぐれなようで気まぐれじゃないし。風に乗って飛んでっちゃうし。
 さて、この話で最も特徴的なのは、登場人物が動物ということでしょう。今までガンバって(寒っ!)隠して書いてきたつもりですが、どうですか?ガンバと十五ひきの仲間たちはなんとドブネズミ。夢見が島で戦った相手はイタチ。グリックはシマリス。そしてキマグレはカモメ。これを読めば、少しネズミに愛着が湧くかもしれません。イタチは怖いし。ではそんな感じで、また次回。
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