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「銀のシギ」 エリナー・ファージョン(つづき)


前回は「トム・ティット・トット」や「大工と鬼六」などの「名前当て物語」の関連性についての考察を述べました。嘘です。そこまで書けませんでした。でも、本当、「名前」を大切にする考えってものすごく多いです。例えばアーシュラ・ル・グウィン著「ゲド戦記」の世界では、本名を知る=その人の全てを知る、という考えがとても重要です。まあ、ありふれた意見ですのできっとこの考えを突き詰めた本か何かが出てるはずです。詳しくはそちらを参照してください。
 で、ファージョンについてなんですが、祖父が名優で、父が作家だったため、幼時から演劇の世界に親しんで育ちました。大人になってからは、劇評家、劇作家、演出家であった弟とともにいくつか脚本を書きました。その内一つは同名の小説「ガラスのくつ」として書き直されています。ちなみにシンデレラが元になっています。そしてこの「銀のシギ」は弟の死後、彼女一人でまず脚本として書かれ、その後小説にされたものなのです。確かに演劇部員として、「あー、これを舞台でやったら面白いだろうなー」と思うシーンが幾つかありましたポルとノルのケンカのところとか。そうそう、この話、私にしてはめずらしく主人公(ポル)が好きです。そしてドルが嫌いです。でもノルのボケキャラは好きです。クライマックスなんか、「お前それでも王様かい!」って思います。黒い小鬼も・・・気味悪いし、嫌いなんですが、一般に伝えられている昔話より、「銀のシギ」の方がまだ可愛げがあります。それに、よく考えると彼は一方的に損してるんですよね。賭けに負けたんだから仕方ないですけど。でもやっぱりこの話のキーパーソンはチャーリー。そしてシギ。この二人(?)の出てくるラスト、そして手品の種明かしの様に貝がうたう詩は、ファージョン特有の幻想的な素敵な雰囲気が出てて大好きです。そしてチャーリーの変わり身っぷり(いい意味で、です。裏切りとかじゃ全然ないです)にはびっくりです。
えーと、月の男について少し書きます。日本では、月のクレーターを、餅つきしているうさぎ、と見ますが、イギリスでは古くから男と見ていました。嘘か本当か知りませんが、安息日に薪を拾っているところをモーセに見つかって、その罪のためこの世の終わりまで月に住む運命になったそうです。そうして作られたマザーグース、
「月の中の男
転がり落ちてきて
ノリッジはどっちに行くのときいた
その男 南寄りに行って
口焼いた
つめたい豆粉がゆ食べたから」
を元に考え出されたのがチャーリー。姫はこの詩には出てこないので、おそらくファージョンの創作でしょう。何にしろ、こんなに短い詩と、昔話から、ここまでおもしろい物語に発展させてしまうファージョンはすごいと思います。本当に沢山本が出てるので読んでみて下さい。やっぱり「マーティン・ピピン」シリーズは良いなあ・・・。あと、ファージョンの本につきものなのが、エドワード・アーディゾーニの挿絵です。単純な線なのに、可愛かったりきれいだったり、書き分けがはっきりしてるし、話に合ってるし、ものすごく好きです。では、二回になりました紹介、これで終わらせていただきます。
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