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「雪渡り」 宮沢賢治


 今回は雪にまつわる話ということで、宮沢賢治の「雪渡り」を主に据えつつ、まあそれにこだわらず「宮沢賢治もの」、ということでサクサク紹介していこうと思います。
 えーと、まず「雪渡り」をご説明いたしましょう。これはとても可愛らしいお話で、人間の子どもの四郎とかん子が、ある雪の日に、子ぎつねの紺三郎と知り合いになって、きつね小学校の幻灯(スライド)会に呼ばれるという内容です。一体どこが可愛らしいのかというと、まず、子ぎつね紺三郎。私が思うに、彼はきつね小学校の生徒会長です。そんなことは一切書いてないんですが、幻灯会の司会をしているのに、大人ではなさそう(子ぎつねですし・・・ねぇ。)なので、そういう結論に達しました。あと、可愛らしいのは鹿の子。登場はしませんが、笛がうまくて、恥ずかしがりやながら歌だけ聞こえてくるところとか、本当かわいいです。歌といえばこの話、歌がよく出てくるんです。歌といってもメロディーがあるわけじゃないから、詩って言った方がいいかもしれないけど。で、音読すると分かると思うんですが、その歌がすごく調子が良くって、そんなところもお気に入りです。あと、この話のメインはやっぱり幻灯会だと思うんですが、そこで現実味(?)があるのは、人を騙す(と評判の)きつねの出す団子を、食べようか食べまいか迷うところかな、と思います。食べたのを見て、きつね小学校の生徒たちが喜んで歌う歌もいいし。
 で、もう一つ、人間の子どもが動物に招待される話に「どんぐりと山猫」というものがあります。この話は「どんぐりの背比べ」ということわざにヒントを得ていると思うんですが、そのどんぐりの争いに主人公がどうやって決着をつけるか。楽しい話です。
 宮沢賢治はこういった、人間と自然の話をよく書いていますが、やっぱり主人公が利己的な大人になると、自然もそれなりの応対をしていて、子どもと大人の違いがよく現れています。「雪渡り」の幻灯会も、『学校生徒の父兄にあらずして十二歳以上の来賓は入場をお断り申し候』ですし、「風の又三郎」も最年長の主要人物は六年生の一郎です。(別に中学生になった途端に、自然に理解がなくなると言っているわけではありません)また、大人を主人公にした話のいい例が、「注文の多い料理店」です。今はそんなに自然と触れ合うこともないと思いますが、せめて本の中でだけでも自然と良い方向で向き合えたらなぁと思います。・・・なんて、ちょっと語っちまいました。あはは。では。
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