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秋の狂言

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野村萬斎主催「ござる乃座」の京都観世会館での公演を見た。
「江戸前狂言」の京都での公演は、とても珍しいのだそうだ。

今日の演目は、
・狂言「萩大名」
遠国の大名が、清水坂の茶屋へ萩の花を見に行く。花見の後は即興で歌を詠まなくてはならないので、あらかじめ太郎冠者に
「七重八重 九重とこそ 思ひしに 十重咲きいずる 萩の花かな」という歌を教えてもらう。ところが、いざとなると思い出せず四苦八苦するという話。
秋の庭の風情が、台詞だけで感じられる。
風流を解さない大名を少し馬鹿にした話だが、野村万作の大名はおっとりとした気品があった。

・素囃子「安宅 延年之舞」
笛、大鼓、小鼓による演奏。みちのくへ落ちのびる義経一行を統率しつつ、関守の富樫を警戒する弁慶を表現した曲。
ちなみに、安宅の関は、現在の石川県小松市にあった。みちのくまでは前途遼遠である。

・狂言「狸腹鼓(たぬきのはらつづみ)」
能舞台には幕が無いので、囃子に引き続き、舞台に台とススキなど秋の草むらが持ち込まれ、猟師と尼に化けた雌狸(萬斎)が登場する。
尼は殺生を止めるよう猟師に説教するが、犬の鳴き声に怖がって狸とばれてしまう。尼から早替わりした狸は、猟師の求めで腹鼓を打つ。これは「一子相伝」の大曲だそうだ。

狂言の舞台には「後見」が控えている。今回は、後見(万作)が、途中倒れたススキの草むらをさりげなく直したり、尼の衣装を受け取ったりと忙しかった。