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島根の旅

 出雲大社は、長い長い参道の奥に、深い緑の山々を背景にして苔むす本殿が鎮座している。古代ここには、直径三メートルもの太い柱を九本使った巨大な社が建っていたらしい。その柱は、三本の丸太を合わせて結わえたものを芯にして作られていた。歴史博物館に、掘り出された柱の跡とともに、近くの遺跡から出土した青銅の剣358本がまとめて展示されていて壮観だった。ここに祭られている大国主命(おおくにぬしのみこと)は、因幡(いなば)の白ウサギや国譲り神話で有名だが、大和朝廷の祖先に破れたものの相当勢力のあった人物だったようだ。
 宍道湖に沿って、水田の間をのんびりと走る一畑(いちばた)電車で、松江に向かう。松江は落ち着いた雰囲気の城下町。松江城は、木造のこじんまりとした実戦用の城で、青空と松の緑に黒い板壁が映える。
 静かな宍道湖畔で夕暮れを待つ。頭上の広大な薄青の空から対岸に目をやると、低空に広がる灰色の雲と、藍色の山の端との間をずっとオレンジ色に染め、湖面に、輝くオレンジ色の光を投げかけながらゆっくりと夕日が沈んでいった。もう七時半近くになっていた。